魂のダンス

書く無用人

20240108

 くもり。

 最近継続できていることといえば筋トレくらいで、他に何か続けているかと言われても何もないとしか言えない。朝起きて仕事に行って割と遅くまで働いてX(旧:Twitter)をだらだらと見て、『墓場鬼太郎』のアニメを見るくらいだ。毎日スポーツに打ち込んでいたときにはあれだけ大嫌いだった筋トレを継続できている。なぜだろう。寝る前に考えてみたのだが、単に金銭的にくるしくカッツカツだったので、食事・睡眠に十分な投資ができなかったからにちがいない。学生時代なんて金があるわけがなくて、粗末な食事、例えばセブンイレブンの揚げ鶏ひとつで米をどんぶりで3杯食べるだとか、揚げ物だらけのバイトのまかないをたらふく食べるだとか、そんなことをしているにもかかわらずなぜか金がなくて、学食でうどんしか頼めなかった。バイトも夜勤のほうが稼げたので、夜中にばかり働いていた。そんな生活で筋肉がつくはずもない。今は労働の稼ぎでプロテインを購入したり、粗末すぎない食事を作ったり、日付が変わるころには眠ったりしているから、筋トレの効果がわりと出ている、気がする。

 

 晴れときどきくもり。

 上のようなことを書いてしばらく放置して、書いたことすらも忘れていた。忘れていたのにはそれなりの理由がある。仕事が割と忙しく、投げられる球を打ち返し、また打ち返し、みたいなことばかりしていたら、いつの間にか夜遅くになっている。そんな労働週間が終わったと思ったら、休みの日には引っ越し準備をしたり、友人の結婚式に参列するために地元に帰省したりしているうちに年末になっていた。

 そして、大風邪をひいた。

 過去2回、年末にインフルエンザに罹患したことがあるが、今回は夜中に急に熱が上がったかと思いきや、翌朝には微熱程度に下がった。ただ、頭痛とのどの痛みがあるので、念のため病院で検査を受けたところ、特に感染症には罹患していないようだったので、単なるひどい風邪だったということになる。よくわからん。

 病み上がりの体に鞭を打って仕事を納め(年明けからはまあまあ余裕ができそうで一安心)、それなりにゆったりとした正月を過ごした(きもち的に激しく動揺する出来事もあった)。年始は引っ越し後の諸々の手続きや後片付けに奔走していたところで、また熱が出た。今度は翌朝どころか次の日の夜まで熱が下がらず、これは何かしらに感染しているにちがいないと思ったが、翌々日になるとすっかり熱が下がった。体調不良の原因は結局よくわからんままになりそうだ。

 引っ越しの後始末がひと段落し、体調も落ち着いてきたので、よく行く古本屋に入荷していた小島信夫『別れる理由』を購入しに行った。まだ在庫が残っていたのでしっかりと抱えて帰った。この年末年始に読んでいた小説(海外のある作品)はSNSのフォロワーからは評判の良い作品だったが、どういうわけか自分にはハマらなかった。忙しない日々のせいで文章を読めなくなってしまったのか、と思っていたが、『別れる理由』の第一章はワクワクしながら読むことができたのできっと大丈夫だ。

 

 京子が一日かかって探した日本式の宿へ案内されたが、山上カレーニンは昔名のある人の別荘だったその古い建物の広い畳を敷いた便所のついたとてつもなく広い部屋が気にくわないといってそこをキャンセルして、それから自分でうまく見つけたホテルへ泊った。今年は山上は子供と絹子を連れて草津へ行く予定になっていた。ところが急に中学生の息子は学校から旅行に行くことになった。山上は不意にこの機会に絹子と二人だけでまた軽井沢のホテルに一泊したいと思い立った。

 この話をきいたとき、彼は微笑した。ホテルで二人きりで泊りたいと思っているこの老人と若い妻は、少し二人の中へ入りこんで考えると、彼の想像のいくつかの箱の中の、隅の方にある一つに当てはまるようなものに思われる。やがて十年たてば、彼の上にもめぐってくる世界であるが……

小島信夫『別れる理由』p.9、講談社、1982年)