魂のダンス

音楽、本、映画などを絡めた雑記

うつつのやさしさ

  昨年度まで早朝のコンビニエンスストアでアルバイトをしていたため、生活は朝に適応している身体へと移行していた。働き出したときに時間を有効的に活用できればよいなと思って継続していたこちらのアルバイト、案外効果はあったようで、現在のところ朝寝坊をすることはなく新卒社会人としての日々を過ごしているが、最近は出勤ギリギリまで布団の中で起きては寝て、起きては寝てを繰り返してしまう。

  こんな時、ものすごく変な夢を見る。突然高校生へとタイムスリップし、見覚えのある教室の風景が水中で目を開けたときのように細部の輪郭がぼやけたかたちで現前に広がる。クラス会が行われていて、突然担任の教員から「お笑いについて自由に論じよ!」と何故か入試問題のような文言が口から発せられる。なぜかノリノリの自分、「お笑いというのは、AからZへ飛躍する瞬間にこそカタルシスがあります」と言ったところで、夢は終わってしまった。何だったんだ、いまの自分の発言は……と思い返すのも一瞬で、案外ギリギリの時刻に目を覚ましたことを認識した自分は、牛乳を浸したフルグラをかきこみ、バタバタ身支度、家を出るのであった。

  せっかく培った早起きの習慣もやや後退している。汗だくになりながら外を回っているいまの仕事によって、自らが知覚する以上に身体には負荷がかかり、早寝遅起きを強いられている状況になっているのだろうか。というわけでここ数ヶ月の目標は、早く起きてコーヒーでも飲みながら、こうした書いたりする活動を朝に余裕を持って行いたいというところである。夜はゆっくりいろんなものを見聞きしたいし、たまにはお酒も飲みたいからなあ。

 

 


NOT WONK / Down the Valley MUSIC VIDEO

 

  6月はといえば、NOT WONKの新譜『Down the Valley』が大好きで大好きで毎日聴いていた。レコードも購入できて嬉しい。多くの曲が1曲のなかで多様な展開をみせることが特徴的で、そこにはロックもパンクもソウルもR&Bも、縦横無尽に昇華されている。東京で行われるレコ発のチケットもしっかりゲットした。加藤くんの弾き語りなら去年観たのだけれど、バンドとしてのライブは約3年ぶりになるのかな?  以前観に行ったときには元銀杏BOYSのギタリスト・チン中村さんと会うことができたんだった。


けもの「コーヒータウン」(MusicVideo)

  日本だと、けものの新EP『美しい傷』も良かった。「リップクリームダブ」が特にお気に入りの曲。

 


black midi - ducter

  Black Midi、待望のデビューアルバムも大傑作。いったいどうやってこんな演奏をしているんだ……!圧巻の一言。こちらも来日公演のチケットをゲットしました。あとは仕事の都合がどうなるか……ちなみにBIG LOVE RECORDSでLPを購入したところ、特典についてきたステッカーが海外製のためものすごくゴム臭くて笑ってしまった。


the hatch - SEXGAME

  余談ではあるが、これを聴いていると、去年リリースされた北海道のthe hatchの作品ももっと評価されるべきではないかと考えてしまう。

 

f:id:tacchi0727:20190710212820j:image

  あとはIceageの来日公演に足を運んだ。全身を包む轟音のなかで、最新アルバム『Beyondless』からもわかるように緩急のメリハリが良く、彼らにしか出せない耽美さも抜群で、見惚れてしまうとはまさにこのこと、最高の夜になった。

 

  映画はバート・レイトン監督『アメリカンアニマルズ』、フォン・シャオガン監督『芳華‐Youth‐』を観た。

f:id:tacchi0727:20190710212844j:image

  特に『芳華』がとてもよかった。中国の歌劇団・文工団に所属する若者たちの青春がほの明るい映像で表現される。しかし青い生活も長くは続かず、時代の大きなうごきに翻弄されながらもそれぞれの人生を過ごしていく、その生に心打たれてしまった。特に良かったのは、中越戦争で心に傷を負ったシャオピンと文工団の解散公演が混じり合う場面だ。戦場に看護師として派遣されたシャオピンは心に大きな傷を負ってしまい、精神病院に入院することになる。その1年後、戦場で傷付いたひとたちの前で文工団の最終公演が行われる。最後の使命を全うする文工団の若者たち、そしてそれを観たシャオピンは、かつて自分が文工団に所属していたころに練習していたダンスを、自然と踊り出す。精神に大きな傷を負ってしまっても、身体の記憶は失われることはない、月夜の光がからだの動きを照らす、その光景の美しさたるや!今年観たなかでも指折りの作品になると思う。

  またNetflix大九明子監督『勝手にふるえてろ』も観た。こちらも面白かった!片思いの彼への思いとそれを人に語るといういびつな妄想と、誰かに自分を認識してほしい切実さの両面に揺れ動くヨシカ演じる松岡茉優の演技がすげぇ。

 

ベルリンは晴れているか (単行本)

ベルリンは晴れているか (単行本)

 
この人の閾 (新潮文庫)

この人の閾 (新潮文庫)

 
三ギニー (平凡社ライブラリー)

三ギニー (平凡社ライブラリー)

 
アイデンティティが人を殺す (ちくま学芸文庫)

アイデンティティが人を殺す (ちくま学芸文庫)

 

 

  そして読書記録としては、深緑野分『ベルリンは晴れているか』、保坂和志『この人の閾』、ヴァージニア・ウルフ『三ギニー』、アミン・マアルーフ『アイデンティティが人を殺す』。いずれも興味深く読み進めた。ヴァージニア・ウルフは最近になって読み進めているが、フェミニズム的視点ももちろんだが、継続していく思考の流れが特に肌に合う。また。『アイデンティティが人を殺す』は自らの帰属とアイデンティティを考える上で非常に重要な書物だ、今年翻訳されたことそのものに意義がある。

  あとは改めて漫画を読んだりしている。近所の古本屋で新井英樹『真説 ザ ワールド イズ マイン』の全巻セットを手に入れて、その力とは何ぞやという描写に打ち振えたり、近藤聡乃『A子さんの恋人』をやっと揃えることができて、キャラクター同士の人間関係にうずうずしたりなどした。

 

f:id:tacchi0727:20190710213026j:image

  そしてはじめての演劇はロロ『はなればなれたち』になった。ようやく観ることが出来たロロの芝居は、非常に幸福な演劇体験となった。演劇に勤しむ向井川淋しいの物語が、佐倉すい中の願望が混じった形で語られる。演劇だからこそできる語りの構造に感嘆しただけでなく、物語、というよりも人の生そのものを語ること、かれらが生きたことそのものをつないでいくことの儚いうつくしさに泣きそうになってしまった。劇中で大胆に引用されていたままごと『わが星』も凄くて、現在DVDを探し中。かつチーム「わが星」が参加している口ロロの「いつかどこかで(マンパワー Version)」をずっと聴いては満員電車で泣きそうになっている。

 

  初めて競馬場に足を踏み入れたりもした。わけもわからず馬券を買っては無駄にしてしまったのだけれども、競馬場の空気に圧倒されてしまった。馬が走る、その姿を観ているひとびとが馬に声援をおくる。もはや怒号に近いのだが、届くはずもない声を絞り出す、ひとそのもののエネルギーがすごくて思わず笑ってしまった。いや、こんなことを言っては怒られてしまうな。馬は同じ馬の足音、風を切る音、騎手の打つ鞭、そしてかれらの声援がミックスされた空間を駆け抜けている。様々な音が混じった空間を駆け抜ける点では、声を荒げるひとも同じように毎日を駆けているのだから、それは応援するよなあと思いながら、ケバブ丼を食す自分は「美味ッ」とぽつり。