魂のダンス

書く無用人

半分(1/23〜2/25の雑記)

 飲み会帰りに最寄り駅、もしくは最寄り駅の前後の駅に降り立ったとき、ひとりでもう少し飲みたい気分にふとなる。家でひとり飲み直すのもいいけれど、ちょっぴりさみしくもなるので、ここは思い切ってひとりでどこかのお店に入ろうかしらんと商店街を右往左往。

 赤い提灯が店前を照らす焼き鳥屋、橙色のライトがほんのりと灯るバー、外見だけではどんなお店なのかさっぱり検討がつかないお店など、居住区付近は案外こうしたスポットにあふれていると、歩きながら実感する。しかし、なかなかひとりで入る勇気が出ない。店員さんが忙しなく動いていたりすでにいる客とお喋りをしていたりすると、そこにふらっと自分が混じることで場の空気がやや変わってしまうことが恐ろしく、なかに入れない。結局どこにも入ることができないまま、帰り道のコンビニでお酒と適当なスナック菓子を買って家に帰り、だらだらNetflixかプライムビデオかTVerを観ながら飲酒、そのまま寝落ちしてしまう。そんな時に限って翌日にかなりお酒が残っているので、どうしたものかしら。

 そのような行動を3回ほど繰り返したあと、ついに自分のなかの決心がついたのか、家でひとり飲むことのさみしさに耐えきれなくなったのかは定かではないが、ようやくひとりでお店に入ることができるようになりました。成長をひしひし感じている。

 3回ほどひとり飲みに挑戦しているのだが、どこもいいお店ばかりで一安心している。うち一軒はすでに何回かリピートしている。店員さんを起点にその場にいるお客さん同士でおしゃべりをする機会に恵まれているのだが、そこで知らない人と話すと心のどこかがさっぱりとする。普段は下っ端会社員としてそれなりに気を遣っているからなのか、純粋に人との会話を楽しめているような気がする。これはお酒の力とはまた違う作用で、場の雰囲気だとか適度にリラックスした状態だとか色々なことが要因だと思う。そんなこんなで終日勤務のち飲酒を行っていたところ、ほとんど雑記を書けない状況に陥ってしまった。

 

 思い返せばこの期間はたまに行う飲み歩きだけではなくて、友人たちとの再会などもありかれらとの時間が非常に充実していた。

 大学の後輩が東京に遊びに来て、ラジオイベント三昧の日々を過ごしたことも記憶に新しい。「Creepy Nutsオールナイトニッポン0」のイベントをライブビューイングで楽しんだり、オールナイトニッポンの脱出ゲームに挑戦したり、空気階段が出るヨシモト∞ホールのお笑いライブを観たり、ラジオエキスポに行ったりした。

 どれも非常に楽しかった。Creepy NutsのANN0は最近聴けてなくて存分に楽しめるのか正直不安だったのだが、自分が大好きな大エドシーランのコーナーがあり、劇場で大爆笑した。後輩曰く最近はあまりやってなかったとのことで、久々披露の場に立ち会えてうれしかった。それとZeebraさんがサプライズ登場して会場は沸きに沸いたのだが、盛り上がるR-指定とオーディエンスの姿とは異なり神妙な面持ちで佇むDJ松永の姿が最高にキュートだった。

 ラジオエキスポは予想を超える人の多さでそれだけでやや疲れてしまったのだけれども、「ハライチのターン」、「たまむすび」、「爆笑問題のカウボーイ」観たものすべて楽しむことができた。

 「ハライチのターン」イベントでは、最近ラジオで話題になっているマックのダブルチーズバーガーが好きという澤部さんを岩井さんがコスパ等の問題で冷笑するくだりや、「ノリノリのターン」で披露されている「のりーっす!」という掛け声を岩井さんが何度も続ける流れが面白かった。坂下千里子をゲストに迎えたトークもなぜか坂下さんのファーストシングルが随所に流れるなどして良かった。

 「たまむすび」は独特の緩さがあってお昼にぴったりだった。なかなかリアルタイムでは聞くことができないけれど、興味を抱いた内容だった。「たまむすびクイズ」のコーナーでは、博多大吉先生が番組内容とは全く関係のない、どちらの手に飴が入っているかというクイズを出題してして、この人流石だ……!と仰天した。

 「爆笑問題のカウボーイ」では太田さんのテンションの高さと田中さんの対応のうまさを生で見ることができた。特に楽しかったのは、アルコ&ピース、うしろシティ空気階段が登場した本イベントならではのコーナーだった。三組の秘蔵ネタも披露された。空気階段はかたまりさんの彼女とその家族がネタライブに来たとき披露されあまりのド下ネタっぷりに気まずくなったというトイ・ストーリーパロディ(大人のおもちゃ版)をやってくれて、「踊り場」リスナーの自分は歓喜。アルコ&ピースはTHE MANZAIで披露された伝説のネタ「忍者」を応援上映のようなスタイルで行うという流石のキレキレ度合い。あっ、うしろシティのコント「アイドルオタク」も面白かったですよ。そのあとの即興ラジオのコーナーでは、爆笑問題・田中さん(ウーチャカ)とアルピー・酒井さん(チャンサカ)コンビの駄弁りにほっかりしました。

 

 非常に充実した連休を過ごすことができ、エネルギー満タンの状態で仕事に向かう。連休明けはじめの業務の日、派遣さんとふたりで作業する時間があった。休日は何をしていたのかという当たり障りのない話題を話しており、自分は正直に「イベントに行きました……ラジオの……」と伝えたところ、何とその方が熱心な「たまむすび」リスナーだったことが判明した。ラジオ話で大いに盛り上がり、それまで特に話していなかったその方との距離がグッと縮まった気がしてうれしかった。

 やはり好きなものは好きと声に出したほうが良いのだ。押しつけは良くないけれども、自分の好きなものを誰かが同じように好きでいてそれをきっかけに色々な交流が生まれたり、また自分のしらない他人の好きを体感してみるとものすごく自分の感覚にぴったりだったり(まれにそうじゃないときもあるがそれもそれで良い)、そうすることで自己の領域、もしくは可動範囲がぐわっと広がっていくようでたのしい。

 

 その流れで好きなものについて、さらにつらつらと述べていく。今月はあまりライブには行けなくて、唯一訪れたのは平賀さち枝さんとHome comings・畳野さんのインストアライブだ。

 ふらっと開始時間少し前にココナッツディスク吉祥寺店を訪れたのだが、すでにたくさんの人の数。全く中に入れる気がしない。ただこのまま帰るのも何だか悔しいなと思い、平賀さち枝さんが歌う姿を外から眺めながら、ホムカミ・福富さんのインスタライブで音声を聴くというちぐはぐなライブ体験をした。それでも「江の島」はとってもいい曲だった。

 畳野さんの番になったところで会場スペースが拡張され運良く中に入ることができた。ホムカミの曲はもちろんのこと、この日はHi,How Are You?「NIGHT ON THE PLANET」やサニーデイサービス「江ノ島」のカバーも披露されて、本当に来て良かったと実感する。

 そしてお二人揃って平賀さち枝とホームカミングスの楽曲を披露。新しいシングルはどちらの曲も好きだけれど、そのなかでも平賀さんが作曲した「New Song」が特に気に入っている。アコースティックで聴いても良いだろうなと感じていたが、この日にそれを聴く願いが実現して嬉しい。大名曲「白い光の朝に」や「カントリーロード」もようやく生で聴くことができ、大きな活力をもらった水曜日の夜だった。

 

 この期間によく聴いていた新作の音楽は、pinegrove『marigold』、Andy Shauf『The Neon Skyline』、GEZAN『狂(KLUE)』、Tame Impala『The Slow Rush』、King Krule『Man Alive!』、Puur『Like New』、Tennis『Swimmer』、NardeydeyのEP、cero松木美定、リーガルリリー『bedtime story』、The Homesick、Shelter boy……こうして書くとキリがなくなってくるが、要するに2020年も良い音楽がたくさんだ。

 特にGEZAN、Andy Shauf、King Krule、Purr、Shelter boyが気に入っている。

 

 映画もたくさん観た。今年公開の映画だと、『ジョジョ・ラビット』、『ロング・ショット』、『ラスト・レター』、『1917』。特に『ジョジョ・ラビット』の登場人物すべてが大好きだ。Netflixでは『セックス・エデュケーション』を観る。シーズン2もますます面白さが加速する。

 

 こうなってくると本当に心に刺さったものは個別で何かまとまった感想を丁寧に書いておきたい気持ちになる。そう思って、ブログの下書きには書きたいものの名前を題名にした下書きがいくつか作成されているが、いまだに言葉の断片が散らばっているだけなので早いうちにまとめることができたらよいと考えている。

 

 ちなみにだが、漫画だとオジロマコト『君は放課後インソムニア』や平庫ワカ『マイ・ブロークン・マリコ』、本全般だと梯久美子原民喜』、シーグリッド・ヌーネス『友だち』、町屋良平『坂下あたると、しじょうの宇宙』などが良かった。

 

 そして今年初の観劇は、ロロ『四角い2つのさみしい窓』だった。最終公演を間近に控えた劇団の物語と旅行中のカップルの物語が交錯していく本作は、人間、というよりももっと概念の大きい世界の境界をぐらつかせるものだった。衣装を変えることで役はスイッチングされ、演者は舞台演出を柔軟に可変させ作品世界を操る。作中の二つの物語だけでなく、人と人、この世とあの世の境界を情緒で軽々駆け巡るような、そんな素敵なお芝居だった。また、Enjoy Music Clubの江本祐介さんによって作曲された劇中歌のフレーズがなんとも印象的だ。

 

向こう側でも こっち側でも 等しくパーティは鳴っている

バラバラのステップ から生まれた 様々なフレーズ

にせもののステージ にせもののシューズ にせもののラブリー

これがあたしの宝物

 

そして作中では川本真琴「1/2」が大きな役割を担っていた。帰り道、彼らの物語、動き、声を脳内で反芻しながら京王井の頭線の車内でさまざまに思いを巡らした。

 

 世間では感染症の広がりの影響で、どんよりとした空気が広がっているように思う。ロロの演劇を観た後、普段使う電車、これが滅多に座ることができない激混み路線なのだが、たまたまお休みだった平日のお昼に座ることができ、窓の外から景色を眺める。都心に向かうまでの景色を改めて眺めると、住宅街が地平に広がり、その上をだだっ広い空が突き抜けていた。街の広さ、そしてそこに生きる人々の数が多いことを改めて思い、はやく各々が重い気持ちを振り払い、皆でお花見でもできればいいのにと考えたりした。