魂のダンス

書く無用人

交感(8/12〜8/31の雑記)

  以前は初対面の相手にも特に臆することなく話しかけることができていたのだが、最近はてんで駄目。一通り挨拶を交わした後に、次にどういう言葉を発すればいいかわからなくなってしまった。

  今日の天気や出身地を聞いたところで、どうしようもない会話だなって思ってしまう醜い性根へと変化したのだろうか。かといって自分の興味・関心を曝け出すことでわたしはあなたに抵抗を感じてないという表明も、ただのお喋りクソ野郎になってしまう危険性がある。あとは自分の発言が思わぬ方向に捉えられたり、意図せず誰かを傷つけてしまうことのないよう細心の注意をはらいたい気持ちが以前よりも増しているからなのか。そんな会話にまつわる良い想定と悪い想定を繰り返し考えているうちに、いつのまにか無言になってしまう。

  最近よほど腹の立つことを言われない限り、当たり障りのない応答を行い、ニコニコしている。「自分らしさ」がないのではと思うけれども、「自分らしさ」が出せるのは好きなことについてあれこれ喋ったりする瞬間、そしてその先にある他愛もない話やボケ、ツッコミにあると感じている。自分と共通の話題で盛り上がることのできる人とずっと一緒にいたいし、欲を言えばもっと出会いたい、もっと自分の知らない面白い世界へと連れて行ってくれて、かつ基盤が通じる誰かとお話しがしたい。

  なんてことを考えながら日々を過ごしていると、Homecomingsの福富くんがラジオ「MOONRISE KINGDOM」において、「身体が千切れそうなくらい寂しい夜がある」と話していた。記憶が正しければ、恋愛相談のメールを受け、友達からじゃないと恋愛関係になれない、共通の趣味がないと難しいみたいな流れで上記の発言があったはずだが、福富くんの発言を聞いたあと、自分のぼんやりしていた思考が明確な輪郭を成した気がした。時折無性に寂しくなる日があるんですよ。

  流石に夜も遅いし、地理的にすぐ行ける距離じゃない。だから友だちに会いに行きづらいし、呼びづらい。だけど誰かと話したい気持ちがたまに浮上してきて悶々する。

  そんな慊らない自分のお供になってくれるのは、最近もっぱらラジオだったりする。具体を挙げれば枚挙に暇がないのだが、特にお気に入りなのは「佐久間宣行のオールナイトニッポン0」、「アルコ&ピース  D.C.GARAGE」、「ハライチのターン」、「山下達郎のサンデーソングブック」、スカート澤部さんの「NICE POP RADIO」などなど。感性に触れる音楽を知れたり、喋りを聞いてふふふと笑う瞬間、気持ちが和らぐ。あと「ふふふ」の字面は、頬笑ましい馬鹿が三人並んでいるようですっごくいいよね。

 
  そんな8月後半は、友人たちと音楽三昧だった。クーラーの効いた部屋でだらだらサマーソニックを観て、知らなかったアーティストだけど結構いい感じやね、と飲酒しながら駄弁ったりした。「そういえば」と、ライジングサンの初日が急遽台風により中止になったのを受け、中村佳穂が渋谷でライブをするらしいじゃないかという話題になる。折角なのでチャレンジしてみようと会場で整理券の配布を試みると、まさかのチケット獲得。うおぉー!友人とハイタッチでにんまりアット代官山。

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  初めて生で観る中村佳穂バンドのライブは、終始「凄い」と「何だこれは……」の脳内往復ラリーで、痺れに痺れた。「Get Back」では、ステージを降りて客席に来た中村さんが、自分の近くを歌いながら歩く。その佇まいたるや、小さき身体のなかにある圧倒的な歌のエネルギーが満ち満ちていて。このとき曲中で、七尾旅人「サーカスナイト」をさらりと取り入れてきたところにとんでもない柔軟性を感じた。柔らかく、そして跳ねる感覚は、アンコールで披露された「あんたがたどこさ」のジャムセッションにおいて爆発。110人という規模も、演者と観客の応答が密でバッチリ。中村さんのライブは基本的に全くと言っていいほどチケットが当たらないので、本当に貴重な体験をすることができたように思う。

 

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  音楽関係、そして中村佳穂繋がりでいうと、次の週には急遽予定が空いたので、蓮沼執太フィルの「日比谷、時が奏でる」を観に行った。スタンディング席で少し遠かったけど、こちらも素敵なライブだった。フルフィル編成、ゲスト多数の第一部は、どこかこの日しかないお祭りのような感覚で非常に楽しかった。特にクラムボン原田郁子さんをむかえた「ある鼓動」は、会場すべてを歌声と楽器の演奏に包み込んでいた。だんだんと暗くなる会場。音に混じって聞こえる蝉の鳴き声。眼に映る光景と耳に入る音は、身体にアルコールを求めさせる。その場にいる人全員が、各々自由に音楽と、この場を楽しんでいるようで、こちらも幸せになる。

  第二部では、「時が奏でる」の再現ライブに。大好きなアルバムを生で聴く体験は、一生忘れることができないだろう。最も心掴まれるのは「ONEMAN」なのだが、後半の「wannapunch!-Discover Tokyo-Sunny Day in Saginomiya」、「SoulOsci」、「Hello Everything 」の流れに胸が締め付けられる。コーラスの木下美紗都さんが今回で脱退されてしまうとのことだが、それでもこれらの楽曲が演奏され続けて欲しいと切に願う。終演後はようやく会えた友人と一緒に、お酒を飲みながらおしゃべりできて楽しかった。


Jay Som - Superbike [OFFICIAL LYRIC VIDEO]


Palehound - Worthy [OFFICIAL MUSIC VIDEO]


oso oso - gb/ol h/nf


  この期間は、Jay Som『Anak Ko』、Palehound『Black Friday』、Oso Oso『Basking In The Glow』、スピッツ草野マサムネさんのラジオから、改めてCocteau Twins『Treasure』などを聴くことが多かった。好みの気分はインディー、フォーク、ポストパンク、ニューウェーブ。そうした流れでThe 1975の新曲「People」は、インダストリアルな質感が好みで大好き。

 

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  映像作品は、ぼちぼち観てた。『全裸監督』は実在の人物に関する問題や使用されている音楽がなぜか現代のものが多い事が気になりつつも、演者の情熱がひしひしと伝わってきて一気に観た。村西とおるをはじめとする登場人物のままならない熱量が、作品全体に伝播しており興味深く視聴した。

  他にも『ザ・ボーイズ』、『ダーク』をゆっくりと観ているが、なかなか時間がなくて進まない。

 

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  映画は『新聞記者』を観た。内閣情報調査室に勤める官僚と若い新聞記者が、政権の暗部の真実に迫っていく。そこで生まれる葛藤。真実に迫ることで及ぶ危険にどう立ち向かっていくのか。いま観るべき内容としか言いようがない。観たものすべてに、自分の頭でどう考えていくのかというアクションを起こさせる作品だった。

 

夏物語

夏物語

 
スキップとローファー(1) (アフタヌーンコミックス)

スキップとローファー(1) (アフタヌーンコミックス)

 
心臓 (torch comics)

心臓 (torch comics)

 


  本は、川上未映子『夏物語』、古本屋で見つけたチェーホフの短編集、漫画だと高松美咲『スキップとローファー』、奥田亜希子『心臓』がとても面白かった。それぞれの魅力については追って言葉にしたいと思う。ただこれだけは言っておくと、本当に良いのでみんなに読んで欲しいんだ。

 
  最近は西友レトルトカレーにハマっている。案外種類も多いし、価格も150円前後という破格さ。カレーもそろそろ自作してみたいと思うものの、ここ最近は生活が苦しいし、家のキッチンが狭すぎてどうしようもない。田舎育ちだから、バカでかい台所のある家じゃないと落ち着かない。(了)