魂のダンス

書く無用人

おこ(2020/4/11(土)~4/15(水)までの雑記)

4/11(土)

 スーパーに買い出しをしに行くついでに、近所のお店で入荷していたmei ehara「昼間から夜」の7インチを購入した。表題作が大好きなのはもちろんのこと、B面に収録されているホール&オーツ「I Can't Go For That」のカバーが素晴らしい。

 レベッカ・ソルニット『それを、真の名で呼ぶならば』を読み終えた。作家、歴史家、アクティヴィストである筆者が、現在のアメリカを取り巻く諸問題に対して、言葉をもって闘争するエッセイが収録されている。これらを読んで、アメリカで起きている出来事と日本の状況に通じるものがあることを改めて学ぶ。重視される個人責任、蔓延する差別的言説、特定の利益の優先、格差の拡大などがそれにあたる。そして、それらに抗うためには、本書冒頭で述べられる

言語に関して注意深く、正確であることは、意味の崩壊に対抗し、希望と展望を植えつけるべき愛すべきコミュニティとの対話を勇気づけるひとつの手段である。
レベッカ・ソルニット『それを、真の名で呼ぶならば』p.7、岩波書店、2020)

という態度が重要だ。本書はいままさに読むべき一冊であろう。

 考えたことを反芻するために、ランニングをする。ここでGEZAN『狂 KRUE』とYves Tumor『Heaven To A Tortured Mind』を聴いて、さらに心と身体を奮い立たせる。GEZANの音楽が特に響く。

 夜は楽しみにしていた『ザ・ドリームマッチ』を観た。フィーリングカップルでオードリー・若林さんが大人気なところですでにテンションがあがる。本編も全組面白かったが、やはりハライチ・岩井さん×渡辺直美さんの醤油の魔人と塩の魔人ミュージカルと、オードリー・若林さんと野性爆弾・くっきー!さんのSFコントが抜群に面白かった。個人的にはオードリー・春日さん×南海キャンディーズ・山里さんの漫才も良かったし、ナイツ・塙さん×チョコレートプラネット・長田さんのコントに登場した意味不明のグラフがヴェイパーウェーブっぽくてずっと笑ってしまった。

 その後、友人の発案で映画を観ながらライン電話で駄弁るという試みを行った。『エクスペンダブルズ』を観たのだが、お酒も入っているせいで内容がよくわからなかった。改めて思い返しても彼らが戦っている理由であったり、そこに至るまでの流れがさっぱりわからない。ただ豪華なキャストに莫大な資金を使って成し遂げる豪快なアクションシーンにはある意味楽しませてもらったので、全否定はできない。ちなみに4人で観たのだが、すでに観賞済みだったひとり以外は自分と同じように内容がよくわかっていなくて、安心した。近況報告をしあって、ほくほくとしたきもちで眠る。

 


4/12(日)

  お酒を飲みながら夜遅くまでしゃべっていたので遅めの起床。さらっとTwitterを開くと、星野源が「うちで踊ろう」を演奏している横で、安倍総理がただくつろいでいるという最悪の動画を目にすることになった。この状況下で文化を支援する態度は見せないにもかかわらず、安易にそれを利用しようと精神に吐き気がする。これを観たあとずっと体調が悪くて、ぐったりとしてしまった。

 その後、山下達郎のサンデーソングブックを聴く。最近のライブ音源特集を放送してくれたおかげで、精神衛生が向上した。素晴らしい1時間になった。しかし、どうやら冒頭の発言に賛否両論あるようだ。個人的には、山下達郎さんは現状に怒りを感じながらも、自らの立場を考えて発する言葉を熟考しているように感じた。自分は冒頭の言葉を聞いて、いま抱いている怒りをそのままに、現状を乗り越えるための冷静かつ寛容な態度と行動をとるほうがよいと考えた。感染を防ぐために自宅にいながら、困窮な状況にいる人々へできうる限りの支援をしていくこと、そしてあまりにも的外れな上からの政策には、この島に住んでいるすべての人々が安心して現状を過ごせるような方針をとるよう声を上げることを、微力ながらも行っていこうと思う。

 乗代雄介『最高の任務』を読み終えた。書くことに関する思索が深まる一冊だった。「生き方の問題」では、従姉への恋、そこで生じた交流や景色、心情が、手紙という形で表現される。表題の「最高の任務」では、大学の卒業式を前にした「私」が、亡き叔母にもらった日記を読み返すことをきっかけに、彼女との交流を思い出す。そして、そんな「私」を家族は旅行に連れて行く。特に表題作「最高の任務」がよかった。こちらも日記を読み、そして書くという行為について、徹底した追求が行われている。自身の日記や文献を引用することで言葉の層が重なる。徹底した情景描写がその層をより厚くしていく。そうした多層が本作を彼方に連れて行き、終盤明らかになる亡き叔母の真意には胸が熱くなる。特に印象深い一文を下に引く。

ということは、今になって筆がすべったと自覚するなら、その記述は私にとって重大な意味を持つ。自分を書くことで自分に書かれる、自分が誰かもわからない者だけが、筆のすべりに露出した何かに目をとめ、自分を突き動かしている切実なものに気付くのだ。
(乗代雄介『最高の任務』p174、講談社、2020)

自分がいまこうして書いていることについても、考えさせられる二編だった(中盤「私」が列車で男から性的な視線を向けられる描写はすこし首をかしげたが)。混沌とした現状で自分は何を考えているのかが、こうして書くことで発露していく、それを感じるためにいまも書いている。

 


4/13(月)

 雨だ、寒い。コーヒーを啜りながら在宅勤務に取り組む。お供にはラジオ。自分の知らない音楽を開拓しようとするときには、スカート澤部さんの「NICE  POP  RADIO」や坂本慎太郎さんやコーネリアスがDJを務める「FLAG  RADIO」を聴くことが多い。京都a-stationさまさまである。そういえば京都には3年前に友人に会いに、そして一度は行ってみようじゃないかと思い立ち、別の友人たちと欅坂46の握手会に行ってからというもの、足を踏み入れていない。志田愛佳さんにおすすめのバンドはなんですかと聞いたら、Hump Buckという答えが返ってきて、正直そこまで聞いていなかったのでなんて返したらいいのか迷っていたら時間切れになったことを思い出す。

 昨夜観れなかった「新生音楽 MUSIC  AT  HOME」のアーカイブ動画を観る。これが全アーティスト素晴らしかった。特に七尾旅人の新曲「今夜、世界中のベニューで(Who’s singing)」を聴いて、ここ数日抱いていた怒りが青く変化し、そしていまもっとも願うべき、祈るべきものが歌われていると痛感し涙した。

 夜になるとさらに寒い。ここ最近は銭湯にもサウナにも行けておらず、身体の代謝がよくない気がする。というわけで、いま住んでいる住居ではじめて湯船にお湯を張ってみた。せっかくなので読んでいる本も持ち込む。ここで失敗だったのは、先に全身を洗ってから湯を張ったせいで、浴室は水蒸気まみれ、本がしなっとなりせっかく外界とシャットアウト、本に没頭できる空間を造ったのに、別の心配事が生まれてしまった。明日は先に湯に浸かってから、全身を洗おうと思う。

 いま読んでいるのは山下澄人『小鳥、来る』なのだが、これがものすごく面白い。1970年代の団地に生きる9歳の「おれ」の視点から語られる、子どもたちの生活。「おれ」の思考を忠実に流れるような読点が連続する語りが魅力的だ。この語りによって、登場人物のすがたや大阪の風景がありありと浮かび、読書のよろこびはまさにこのことだと感じる。『燃えよドラゴン』を観た子どもたちが、ブルース・リーのアクセントや文節の区切りで言い争う件を読むことがたのしくてたのしくて、何度も繰り返し読む。「おれ」が劇場で『燃えよドラゴン』を観たときに、普段はサンドウィッチマンをしている「とらやん」と遭遇した場面などにみられる思考の流れには感嘆する。

 とらやんはあんまりちゃんと映画を見てなかった、見ずにお菓子ばかり食べていた、外人が話している場面になったので、よく外人が話している場面になった、おれはとらやんの後ろの席にうつって、とらやんに
「お菓子ちょーだい」
 と言ったら
「あやーん」
 と大きな声でとらやんが言ったから、少し離れた席で足を前の席の背もたれに乗せた男のひとが、ガン、と背もたれをけった。
山下澄人『小鳥、来る』p.71,72 中央公論社、2020。

太字部分は自分が強調させているのだが、ここでふと「おれ」の認識がぱっと挿入される。これが気持ち良くて何度も読み返してしまうのだ。

 


4/14(火)

 自炊スキルがやや上がって、包丁で野菜を切るスピードがどんどんはやくなっていることがきもちいい。ここ数日は、Twitterでみかけたおかず豚汁を作って食べている。いまだに「とんじる」と読むか「ぶたじる」と読むかはいまだ迷うが、自分は「とんじる」と読んでいる。料理研究家土井善晴さんが一汁一菜でいいみたいなことを言っていたのもあながち間違いではないくらい、ご飯とおかず「とんじる」だけで十分に美味しいし、いける。ただ二十代の自分にはややもの足りないため、豆腐や魚肉ソーセージをついでに食べている。魚肉ソーセージには最近ハマっていて、特に丸大食品のフィッシュソーセージがお気に入り。ぷりっぷりなんだ、これがまた。

 スーパーに買い出しに行った。ついこの間友人たちとビデオ通話したときに飲んだはずなのに、またお酒が飲みたくなってしまうのは、さみしさやいらだちを抑えるためなのだろうか。気づいたら籠にサッポロ・ゴールドスターが数本入れてあった。発泡酒のなかではこれが抜群に美味しいと自分は感じており、好んで買っている。

 やはり風呂上がりのビールがうまいでしょうということで、昨日の反省を生かして、先に湯を張る。やはりこの方が半身浴読書に没頭できるので良い。今日も山下澄人『小鳥、来る』を読み進める。

 そしてご飯とおかず「とんじる」、魚肉ソーセージ、ゴールドラガー、そしてニューヨークのYouTubeチャンネルでフィニッシュ。

 TwitterでNight Tempoさんがはっぱ隊「YATTA!」のリミックス音源をアップしていてものすごく元気が出た。実はべろべろの状態でカラオケに行ったときに、自分は歌ってしまうことが多い。いつぞやのカラオケで友人たちとみんなで踊ったな、そういえば。はやく友だちとカラオケにも行きたいな。

 杏さんが「教訓1」を引き語っている動画を見て、揺さぶられたまま眠る。

 


4/15(水)

 ふとXTCを最初から聞き直そうと思い、『White Music』と『Go 2』を再生しながら業務に取り組む。やっぱり大好きだ。『Go 2』は囲碁からタイトルがとられているらしい。この流れで、Beach Boys『Surfur Girl』やDavid Casidy『Home Is Where the Heart Is』を聴く。

 午後からは行くはずだったライブが延期となってしまい、それが無事開催されるよう祈りを込めてKIRINJI『cherish』を聴いた。改めて聞くと音の配置が完璧で圧倒されてしまう。

 飯を食いながら、昨日の『相席食堂』野球対決回を見る。きっとおもしろいと期待していた通りのおもしろさ!長州力の「形変えるぞ!」というパワフルすぎる名言ももちろんのこと、打者なのに隠し球を駆使するミヤちゃんの活躍に笑いっぱなしだった。

 そして購入したINA『牛乳配達DIARY』が抜群に良かった。山下澄人『小鳥、来る』も読み終えた。こちらも良い作品だった。

 夜にアップロードされたBEYOOOOONS『ビタミンME』がパワフルなポップロックチューンでとってもいい。メンバーの元気いっぱいな姿が映っていることももちろんのことだが、商品の宣伝(カゴメとのタイアップ企画)もいやらしくなくて良い。影響を受け、しっかりとカゴメONEDAYを購入しそうだ。そして「靴そこ減り方 付き合う友だち ついつい偏りがちだけど~」というビタミンというテーマも踏まえた児玉雨子節炸裂の歌詞にグッときてしまう。その後、オフィシャルチャンネルにアップされていた「都営大江戸線六本木駅で抱きしめて」のアカペラバージョンを観たが、これもめちゃめちゃ良い。何といっても若干15歳にしてボイパをし、そしてトークボックスを操る清野桃々姫さんがすごい!というわけでBEYOOOOONSの動画を一通り観て元気が出た。