魂のダンス

音楽、本、映画などを絡めた雑記

2019年ベストアルバム20枚

 もともとは音楽を聴いた感想とかを更新していければよいなと考えて始めたこのブログも、いつの間にかちいさな日常を気の向いたときに書き殴るノートみたいになってしまった。これには理由があって、自分は専門的に音楽をやってもいなかったので知識はないし、細かいリスニング術を体得していないから音楽について語り口を持っていないんじゃないかと思ったり、むしろ自分よりもはるかに音楽に詳しくて愛が溢れる人たちの言葉を読むほうが楽しいんじゃないかと思ったから。

 それでも何とか記録にして残しておきたい。やはり自分の生活のそばには常に音楽があったのだ。今年から新生活が始まって慣れない日々に四苦八苦、最近は平日も帰る時間が遅くなり好きなことに費やすことのできる時間が相当減ってきて正直つらい。けれども新しくリリースされた新作にワクワクすること、サブスクやレコードを通じて過去の素敵な音楽に心躍らせること、そしてたくさんのライブを生で観れたことによって、何とか2019年も生き延びることができたのだと思う。半分記録で半分挑戦。今年リリースのよく聴いたアルバムを20枚選びました。加えて述べるのであれば、最近は順位付けをすることに疑問を抱く思いがややあって、今年は思いついたままに、とは言いつつ最初と最後に取り上げる作品は決まっているのだが、書き連ねていこうと思う。

 

※以下順不同

 

柴田聡子『がんばれ!メロディー』

f:id:tacchi0727:20191226094211j:image

 今年は何と言っても柴田聡子さんの最新アルバムをずっと聴いていた。上京して初めて観たライブも柴田さんのインストアライブだ。

 跳ねるような柴田さんの歌声と、呼応しながらハミングするように響く遊び心あふれる楽器のアンサンブル。「結婚しました」の「流れる雲を〜」以降の展開や「涙」のサビ前のまどろみ、「ラッキーカラー」は終盤に明らかになるところなど、特に楽曲の構成が自分は大好き。そして何よりも歌詞の絶妙な言葉選び。日々のふとしたときに感じる感情のゆれ動き、出来事、景色それぞれが、折々の色を成して聞き手の想像を刺激する。聴けば聴くほどそのときに感じることが変わっていく何とも不思議、けれどもずっと大切になるであろう一枚。

 

スカート『トワイライト』

f:id:tacchi0727:20191226094220j:image

 そんな柴田聡子さんのバンドセットである柴田聡子 inFIREのライブを観たのは、スカートの企画ライブだった。ライブを観ながら、スカートの新作もよく聴いた1年だったと再認識する。日常の一瞬一瞬にきらめきを見出すNICE POP。バンド感は増し、澤部さんとメンバーのこれまでとこれからがつまったアルバムだ。「遠い春」にストリングスアレンジは抜群に合う。表題曲の「トワイライト」は彼らの新しい代表曲になる1曲だと思う。夕暮れはわたしたちを等しく染めないからこそ響くのだ。『メタモルフォーゼの縁側』で知られる鶴谷香央理さん作のジャケットもすばらしい。柴田聡子さんの新作と並んで、はやくLP化して欲しいアルバムだ。

 

Hovvdy『Heavy Lifter』

f:id:tacchi0727:20191226094236j:image

 絶対にLPで聴いたら抜群であろうに、まだ入手できていないのはテキサスのポップデュオHovvdyのサードアルバム。全体としてローファイ感が哀愁漂うメロディを引き立てつつ、「Mr.Ree」や「Ruin(My Ride)」などの打ち込みを導入した楽曲により、作品全体の強度が増しているように思う。夜帰宅した後、部屋でゆったり流すのがベストでしょう。

 

Whitney『Forever Turned Around』

f:id:tacchi0727:20191226094257j:image

 シカゴのインディーフォークデュオの彼らによるセカンドアルバムも非常に良かった。ファルセットの効いた歌声、もこもことした録音の相乗効果で、聴いている自分がいま住んでいる都会の喧騒が、一瞬で草原の朝の景色へと変わるような印象を受ける。各楽器の音色が極上の豊穣を演出する「Before I Know It」が流れた瞬間、これは年間ベストアルバムに強く推したいと決心したのだ。1stはそんなにハマらなかったのに、本作は何度も何度も繰り返し聴いている。

 

Matt Maltese『Krystal』

f:id:tacchi0727:20191226094311j:image

 さて、ここまでの流れにのってしばらくは「家でひとり聴くことで感情が渦巻いちゃう」シリーズが続きます。こちらはサウスロンドンのシンガーソングライターによるセカンドアルバム。Matt自身がベッドルームスタジオで録音を行ったという本作は、やるせないぼくたちに響くせつないスウィートポップソング集。1曲目の「Rom−com Gone Wrong」でピアノが鳴った瞬間、おれは泣く。「Tokyo」という曲があるくらいだから、来日公演も切に観たい。

 

SOAK『Grim Town』

f:id:tacchi0727:20191226094326j:image

 おれは泣くというと、北アイルランドのシンガーソングライターによるセカンドアルバムもそんな作品だ。どんだけ泣くんだおれは。バンドサウンドからエレクトロサウンドまで柔軟に包括しつつ、彼女の声でしか成しえない楽曲群が揃っている。本作を聴くとどんな困難でも乗り越えていけそうな力を感じるのだ。「I  Was Blue,Technicolor Too」からの「Deja Vu」、「Scrapyard」の流れには彼女のすばらしさが見事に表現されていて最高だと思うので、たくさんのひとに聴いてほしい。

 

(Sandy)Alex G『House of Sugar』

f:id:tacchi0727:20191226094337j:image

 そして何と言っても(Sandy)Alex Gのレコードを家で聴くことが本当に多かった。甘さからよどみまで、この1枚のなかに封じ込められている。すっと身体に入ってきそうでありながら、「Near」や「Project 2」といった楽曲に覚える(良い意味での)ひっかかりが、作品の奥深さを増幅させる。まさに珠玉のローファイフォークサウンド。特に「Southern Sky」とボーナストラック「Sugarhouse」は、とんでもないものを生み出してくれたな……という感想に尽きる。

 

girlpool『What Chaos Is Imaginary』

f:id:tacchi0727:20191226094349j:image

 ロサンゼルスのデュオであるgirlpool「Swamp and Bay」という楽曲も、感銘という一言では足りないくらい愛が湧いて出る。Tuckerによる低めの歌声と切なさを音で具現化したようなギターソロに、聴いているこちらの感情はぐちゃぐちゃになってしまう、そのくらいエモーショナル。もちろんこの楽曲だけでなく、アルバム全曲が懸命さをもってこちらに迫りくる大傑作のサードアルバム。

 

Vampire Weekend『Father of the Bride』

f:id:tacchi0727:20191226094408j:image

 移動範囲内に新しい発見ができるお店がたくさんあるので、上述のようにこれまでしっかり聴く機会がなかったアーティストにどっぷりとハマることも多かった。しかし長年聴いてきたものの良さに改めて気づく年でもあったように感じる。Vampire Weekendの新作は、内向的な前作も素晴らしかったが、牧歌的?という形容が正しいかはわからないものの、グッドメロディ・グッドサウンドのきらめき。彼らのことがずっとだいすきでよかったと思う。HAIMのDaniel Haimや、The InternetのSteve Lacyのゲスト参加も嬉しい。

 

Deerhunter『Why Hasn't Everything Already Disappeared?』

f:id:tacchi0727:20191226094534j:image

 そしてDeerhunterの8枚目となるアルバムも、長いキャリアを経たからこそ出せる成熟といびつが抜群に良くて、1年を通してよく聴いた。楽器の鳴り方がすごく不思議で、これは2019年にリリースされた作品なのか、それとも50年前くらいの作品なのか、はたまた未来からやってきた音なのかさっぱりわからなくなるのが魅力なのだと思う。

 

Britany Haword『Jaime』

f:id:tacchi0727:20191226094435j:image

 1曲目「History Repeats」のドラムが鳴った瞬間、思考が停止するくらいの衝撃を受けたAlabama Shakesのボーカルによるソロアルバムを今年のベストアルバムに選出しない理由はない。どうやったらこんな曲たちを作れるんだよ……誰もが圧倒されるパワーに満ち満ちた大傑作。

 

ミツメ『Ghosts』

f:id:tacchi0727:20191226094454j:image

 去年リリースされた「エスパー」の期待通り、ずっとだいすきなミツメの新作は非常に良かった。浮遊感と生々しさが同居する傑作。冒頭の「ディレイ」では、甘美なメロディーを包む各楽器のアンサンブル、また中盤以降のノイジーなギターからも前述の特徴があらわれている。謎の飛行体Xの不時着と再飛行を傍観する視点の歌詞の不穏さと、美しいサウンドの絡み合いが素晴らしい「エックス」が、個人的ハイライト。

 

のろしレコード『OOPTH』

f:id:tacchi0727:20191226094504j:image

 ミツメが登場したというわけで、ここからは気に入った日本の作品をつらつら挙げていきます。松井文、折坂悠太、夜久一によるフォークユニットの新作がものすごく良かった。「コールドスリープ」の詞は小さな部屋から広がるSFのような一曲。やさしい音像が詞世界を包み込み、聴くこちらの想像力を刺激する。「コールドスリープ」の詞からも明確で、このアルバムを聴くとここではないどこかへ連れて行ってくれるような気がする。バンドサウンドはフォークを基調としながらも、異国のエッセンスを混交的に取り入れているからなのか。まさに「豊か」という形容がぴったりの作品だ。

 

ROTH BART BARON『けものたちの名前』

f:id:tacchi0727:20191225234458j:image

 そしてROTH BART BARONにようやくハマりました。こちらは聴いている最中、絵本や童話の世界に入り込んでいくようなきもちになる。「春の嵐」はメロディーとコーラス、各楽器の演奏が抜群、構成もドラマチックで本当の本当に良い曲だ。いま一番ライブが観たいバンド。

 

カネコアヤノ『燦々』

f:id:tacchi0727:20191225234447j:image

 カネコアヤノさんはいつの間にか全くチケットが取れなくなり、ちょっぴり寂しくもあるのだが、その理由も納得、一年ぶりとなるアルバムは誰かの後押しとなるような祈りが強く込められた作品。本作のおかげで、自分も前を向く後押しになった。フォーキーで温かみを残したような録音も抜群に効いている。そして詞も以前にも増して、日々を暮らす人々のお守りとなるように宛先がはっきりしている印象を受ける。「感動している君の目の奥に今日も宇宙がある」という言葉のひろがりは、彼女にしか生み出せないやさしいパンチライン

 

NOT WONK『Dawn the valley』

f:id:tacchi0727:20191225234513j:image

  同世代が強い意志と行動力をもって活動していると、こちらも居てもたってもいられなくなってくるのだが、それを体現化したのがNOT WONKのサードアルバムだ。多くの曲が1曲のなかで多様な展開をみせ、ロックもパンクもソウルもR&Bも縦横無尽に昇華されている。もちろんライブもすばらしくて、「Of Reality」の生演奏でしか生み出せないタメや呼吸の阿吽などは半端ではない。聴いているこちらの内部から新しい衝動を生み出す力を持つ圧倒的な作品。

 

black midi『Schlagenheim』

f:id:tacchi0727:20191226094617j:image

 怪物。予想がつかないスリリングな曲展開に、卓越した演奏技術、これを聴いてブチがらないわけにはいかない。楽曲構成面で感じるロジカルさと、ライブでの即興演奏を観たからこそより強く感じるフィジカルさが、絶妙な塩梅で爆発しているダークスター。

 

Dos Monos『Dos City』

f:id:tacchi0727:20191226094515j:image

 black midiのライブでもオープニングアクトを務めた彼らのデビューアルバム。そして今回挙げる唯一のヒップホップアルバム(タイラーや舐達磨、Tohjiとかも聴いていたけれど泣く泣く紹介できない)。混沌としたサウンドメイクに、知性と言語遊戯に富んだリリックがすばらしい。「マフィン」のサウンドと三人のバースは、先の特徴をみごとにあらわしたものだと思う。ライブの際、VJで石井聰亙『爆裂都市』の映像が使われていたことで、そのカオス感とマッド感に少し納得がいったのと同時に自分が好きなきもちがはっきりとしました。

 

Big Thief『U.F.O.F』

f:id:tacchi0727:20191226094633j:image

Big Thief『Two Hands』

f:id:tacchi0727:20191226094649j:image

 そして最後に、なんと言っても今年は自分にとってBig Thiefの年だったと思う。「天」と「地」というふたつの大きなテーマがあるらしいが、自分は特に人間の背反性、両義性が、うつくしいバンドサウンドで表現されていると感じた。まさに大傑作。「Jenni」のギターの鳴りには感情の動きが増幅される。「Shoulders」のどうしようもなくかなしい歌詞に、Adrianne Lenkerの歌声とメンバーの演奏が共鳴して、これ以上にないほど迫ってくる。個人的には『Two Hands』の方が好みだけど、これは二作品あるからこそ良さはなおのこと引き立つと考えたので、どちらも選出しました。

 

 ちなみにBig Thiefを二枚選出したために、泣く泣く漏れた21枚目はTHE NOVEMBERS『ANGELS』です。

f:id:tacchi0727:20191226142808j:image

 

 というわけで、以上が今年のベストアルバム20+1です。こうしてみるとやっぱり自分はインディー(・ポップ、ロック、フォーク)が好きなのだなと改めて実感する。来年は「作品とより向き合う」、「現在と過去のどちらにも均しい熱量を捧げる」を心に抱いて、音楽だけでなくすべての創作物にこのマインドでふれていこうと思う。

 

f:id:tacchi0727:20191226191003j:image