眠っている間も意識が現実に接続していて、常に思考をめぐらせている日々だった。これまでの学びの集大成を仕上げてやろうと鼻息を荒く胸を張っていた二年前の自分はどこへ消えたのか。「うっうっうっ(涙)」机に張り付いてはいるものの、言葉は出てこない。思考の圧は身体にかかる重力を強め、猫背は治らなくなってしまった。インフルエンザ予防に効くと聞いて、紅茶を何度も薄めて飲む(金が無いんや、節約節約)。ストレートティーの濃い色が、白湯を足すごとに薄くなっていく1日のマグカップのなかの変化は、己のハリキリの薄まりとよく似ている。
それでも足場から落ちるわけにゃいかん。ギリギリのところで踏ん張って、何とか学生最後の課題を提出し終えた。題材と意欲は努力賞、肝心の中身は残念賞。現在の自分の力量は、文字の印刷された紙にしか反映されないのだ。町田康の『告白』という小説で、主人公の城戸熊太郎が本当は弱い存在なのに、「直線的な力の行使」に対抗する「義」のために、ハッタリの技を駆使して内実の伴わない強さを獲得していくエピソードがあったと記憶しているが、自分の論文は字数と紙の量だけが強みで、書かれている内容はハッタリそのものなのではないかと考えてしまう。「うっうっうっ(涙)」
だから、なにか、こう、悔しいのだ。そして、このままでは終わることができない。くるしくても、まだまだこの試みを続けていきたいという気持ちが、自分のなかに少しは見つかる。来年度からは知識をインプットする時間がかなり減ってしまうことが予期されるが、学び続け、思考を止めないように日々を過ごしていかなければならないのだ。脳を踊らせ続けよう。血肉が通った言葉を発していこう。
Toro y Moi - "Freelance" (Official Music Video)
通学の際が一番憂鬱で、大好きな音楽も右から左へ受け流れてしまうのがまたこれ辛く、こちらのインプットはてんで駄目だったのだが、Toro Y Moi『Outer Peace』は心の底にある隠れてしまった気分を押し上げてくれる絶妙のファンクサウンドだった。勝手なイメージではあるが、おおらかに広かれた場所っていうよりも、狭い自室で聴くほうが良い。一聴すると冒頭3曲の跳ねるビートに身体が揺れるが、全体を通して緻密かつ内省的なサウンドプロダクションが前述の感想の要因ではあるのだろう。また「Laws of the Universe」という曲の歌詞に「James Murphy is spinining at my house/I met him at Coachella」とあるように、自室から解き放たれる想像力のようなものがアルバム全体を通して、行き渡ってると感じた(なんかこの文章、エセ評論家みたいでイヤだな)。今月のベストアルバムはこちらで間違いない。
カネコアヤノの新曲7インチ「明け方/布と皮膚」を無事に手に入れることができたことも、心の支えになった。これまでのカネコアヤノ(バンドセット)のエッセンスを突き詰めたような暖かなサウンドと、決意表明ともとれる歌詞が聞き手の生活を彩る「明け方」。ついにトロンボーンとフルートを導入、絶対合うに決まっているでしょ、カレーとトンカツみたいなものだよ、「布と皮膚」。インターネット上には公開されてない2曲ではあるが、昨年リリースの『祝祭』が大好きなひとたちには堪らないでしょう。今年も期待大のシンガーである。
Vampire Weekend - Harmony Hall (Official Audio)
そして待ってました、Vampire Weekendの新曲リリース。海外の音楽を聴き始めたのは、ませにませてイキリ散らかしてた中学生のころだったと思うので、かれこれ10年は経つのだが、米国のアーティストならばずっと好きが続いているのが彼らだ(ちなみに英国だとThe xx)。公開された2曲ともに素晴らしいという言葉以外見つからず、アルバムのリリースが楽しみで楽しみでしようがない。
Have a Nice Day!(ハバナイ!) - わたしを離さないで【 MV Edit Version 】
某音楽番組で2018年のベストソングが発表されていたが、そこで「あっ、新曲出してたんだ」と気づいたのがHave a Nice Day!「わたしを離さないで」。多幸感と切なさが同居しているとはまさにこのこと。この曲でライブでは観客がみんな踊り狂うんでしょ⁇最高に素敵じゃないか。MVの横田真悠さんも可愛い。
あとは今月きちんと向かい合えていなかった作品がたくさんあるので、肌寒さが残るを苦悩を脱した2月のリセットした心で迎え入れたいと思う。
GEZAN-BODY ODD feat.鎮座DOPENESS.syucream.Taigen.LOSS .蛯名 啓太.OMSB-live渋谷CLUB QUATTRO(2019.1.24)
とはいえ思い返せば、地元に帰省して旧友たちとの会話を弾ませたり、挑戦へ向かう塾の生徒を応援したり、作品が好きで追いかけ続けていた作家さんが芥川賞を受賞したことを喜んだりと、細やかな記憶はたくさんある。何かひとつのことに打ち込んでいたように思いがちだが、様々な出来事で埋め尽くされた1月だった。忘れたくないものはたくさんあるし、忘れてはならないこともたくさんある。色々とひと段落したので、ふたたび手帳を有効活用していこう。GEZANの姿を見聞きすると、そんなことを感じるようになってくる。
「オラオラぁ、あざっした!」金属バットのお漫才で友保さんが発する台詞を、声を大にして叫びたい。
最後は今年早々に覚えることのできて1番嬉しかった言葉を張って締める。(了)
昨夜の飲み会で自分が「いま院生なんだよねー」って言ったら、看護師の友人に「陰洗!?」って聞き間違えられた。「陰洗」、つまり業界用語で「陰部洗浄」。最近覚えた言葉で一番面白い。
— たあいち (@tacchi0727) 2019年1月4日