魂のダンス

書く無用人

足は伸ばして寝るのがいい(20/9/9(水)〜21/2/7(日)までの雑記)

 近所から近所に引っ越した。大きい荷物は一人の力ではどうにもならんので、業者に依頼し搬送してもらった。小さい荷物は一時期いそうろうしていた友人が置いていった荷台を拝借し、がたがたころころと運んだ。荷台の上には、本などが入った段ボール、洗濯籠に入れられ剥き出しになった掃除用品、良い雰囲気にはなるもののスイッチが電球近くにあり点灯がやや面倒臭い間接照明、奈良美智が描いたYo  La Tengoの最新アルバムのポスターなどをぎっしりと敷き詰める。荷台が地面の凸凹に振動して鳴る音が案外大きくて厄介だなあと思いながらそれを転がしていると、大きな道路にさしかかる。旧宅から新居に行くためには、大通りを渡る必要があるのだ。これは当たり前の日常的な光景ですよと周囲に語りかけるように、そしてラフな格好で働くことが許されている運送業者の面構えのように信号待ちをしていると、横のおじさんが荷台に載った荷物をじろじろと見てくる。別に見られて恥ずかしいものなどひとつもないはずなのに、こうもじろじろ見られると何かやましいものが混入しているのではないかという気がし、こそばゆくなってしまう。そんなきもちに耐えきれず、運送業者風の巨人は信号が青に変わった途端、トラックのエンジン音に負けず劣らずの運送音を発しながら横断歩道を小走りで駆けて行く。

 

 今回引越しをした理由は今年度末で一度契約が切れてしまうだとかいろいろあるのだけれども、おおきな理由としては明朝に聞こえてくる音が原因であった。

 朝ぼらけ、まだ眠っていたいのに地鳴りのような音がどこかからか響いてくる。むー、むー、むー。スマホを見るとまだ4時半、一体どこのどいつだこんな音を立てているのはと思い、注意深く耳を澄ましてみると、隣人の唸り声だった。いびきなのか、目覚めの悪さからなのかわからないが、隣人はこの時間になると、むー、むー、むー、とウーファーを通した重低音を発しながら睡眠と戦い始める。そんなに起きるのが嫌なのか、なにか悪い夢でも見ているのか、とか考えているうちに、頭が覚醒してしまい睡眠は中断、うとうとしながら本来の起床時間になり目覚めは散々、こうした状況が頻繁につづくことが地味なストレスとなり、引っ越しを決断したのだった。しかし、普段すれ違ったりするときの隣人は丁寧に挨拶してくれるので、根はきっといいひとなんだと思う。隣人よ達者でな、快適な睡眠をするためにまずはロフトから降りていいベッドでも買って睡眠してみるのはいかがかでしょうか。

 こうした理由であったり、隣の棟からはカップルがセックスしている音が頻繁に聞こえてきたこともあったりして、思い切って決断した今回の引っ越し。仕事の繁忙期と並行してしまいまさに休む間もなくといった具合であったが、前よりも立地がよく、広くて閑静な住宅を選ぶことができ、とりあえずは一安心している。

 

 そんなこんなで、このブログも2020年によかった音楽のまとめのみを更新するに留まっていたが、ようやく落ち着きを取り戻したのでまた「書こう」と思うようになった。

 忙しい時期には家に帰ってメシ食って引っ越しの準備をして寝るといった生活が続いていたが、その間にも開催された音楽のライブであったり、見たり聞いたりしたものなどによって、地に足をつけていく力を得ることができた。

 カネコアヤノとサニーデイ・サービスのツーマンライブに、cero、Tempaley、D.A.N.のスリーマン、NOT WONK主催の「Your Name」など、見ることのできたライブはすべて素晴らしく、生で大きい音を体感することが日頃の生活にどれほどのエネルギーを得ていたのかをつくづく実感したのだった。

 


サニーデイ・サービス x カネコアヤノ | Sunny Day Service x Kaneko Ayano at Shibuya WWW X

 


【cero/D.A.N./Tempalay】SHIBUYA MUSIC SCRAMBLE presents “CUT IN”Documentary digest movie

 


NOT WONK / dimensions MUSIC VIDEO

 

 そして、リリースされたNOT WONKの新譜『dimen』、パンク、ソウル、R&B、ジャズなどをシームレスに吸収しながら、聞くものを突き動かすエネルギーに満ち満ちた傑作で、何度も何度もリピートしている。聞き手をいい意味で裏切りながら期待以上の興奮を与える展開や曲ごとに変幻自在、かつ曲の特性をばつぐんに引き出すミックスは聞くたびに発見がある。そして、ラストで歌われる「I goota new rose,I got it good ,your name」のフレーズには、他者を尊ぶ視点と、ともに前に進んで行こうとする決意のようなものが感じられ、たいへん勇気づけられる作品となった。

 

 新居の玄関横には真っ赤な山茶花が凛と咲いており、出かける前や帰宅後に眺めるのが楽しい。行き帰りの道にある住宅はどの家もしっかりと庭の手入れが行き届いており、これは何という植物なのだろうかと考えるのもよい。そんなふうに感じたのは、乗代雄介『旅する練習』を読んだからで、こうして書くことを再開したのも本作を読んだ影響にある。ゆっくりではあるが、かつての習慣にこれまで以上に向き合っていこうと考えている。

 

旅する練習

旅する練習

 

 

 

※以下は備忘録

 

最近は漫画ばかり読んでいる。引っ越しによって泣く泣く手放したものも多いけれど、新たに買ったものはどれも面白い。(結局総数は微減だったが、なんとか新しい棚に収まった)

 

 

 

A子さんの恋人 7巻 (HARTA COMIX)

A子さんの恋人 7巻 (HARTA COMIX)

 

 

 

 

転がる姉弟(1)

転がる姉弟(1)

 

 

ブランクスペース(1)

ブランクスペース(1)

 

 

ちくまさん

ちくまさん

 

 

 

バクちゃん 2 (ビームコミックス)

バクちゃん 2 (ビームコミックス)

 

 

 

コルソン・ホワイトヘッド『ニッケル・ボーイズ』はBLM運動についてさらに考えるきっかけとなった。ゆっくり少しづつ石牟礼道子『椿の海の記』を読んでいることが心にしみる。友人が短歌賞を受賞して自分のことのようにうれしい。

 

ニッケル・ボーイズ

ニッケル・ボーイズ

 

 

椿の海の記 (河出文庫)

椿の海の記 (河出文庫)

 

 

短歌ムック ねむらない樹 vol.6

短歌ムック ねむらない樹 vol.6

 

 

 

ドラマや映画もぼちぼちと見ている。今クールの日本のドラマは『おちょやん』、『俺の家の話』、『にじいるカルテ』、『ここは今から倫理です。』を観ている。

 


なぜその女から離れられないのか…森崎ウィン主演『本気のしるし<劇場版>』予告編

 


『クイーンズ・ギャンビット』予告編 - Netflixhttps://www.youtube.com/watch?v=BHODdNs8vSo

 


Master of None Trailer (HD) Aziz Ansari

 


映画『私をくいとめて』本予告 〈12月18日全国ロードショー〉

 


映画『花束みたいな恋をした』140秒予告【2021年1月29日(金)公開】

 

音楽は相変わらずインディー多め。昨年に引き続き、アシッド・フォーク、サイケ、ブラジルを掘っていきながら、ようやくジャズも聞き始めた。

 


fuvk - imaginary deadlines (Full Album)


Indigo Sparke - Everything Everything (Official Music Video)


Buck Meek - Candle (Official Video)


Bruno Major - Regent's Park (Official Audio)


Puma Blue - Opiate (Official Video)


Margo Guryan - Take a picture (1968) (US, Sunshine Pop, Baroque Pop) (+Bonuses)


Shira Small- Eternal Life


Mike Cooper - Raft (full album)


But Not For Me (Vocal Version)


Tudo Que Voce Podia Ser


Egberto Gismonti - Raga

2020年リリースのよく聞いたアルバム20選

 山々に設営されたステージや出店に囲まれて、国内外のさまざまな音楽を聴き、躍る。友だちとお酒を酌み交わし、ご飯を食べて、SNSで交流があるひとたちと会い、「はじめまして」だとか「おひさしぶりです」とかとあいさつをする。

 そんな夢想をいまでもみる。中学生のころからの念願であるフジロックは、コロナウィルスの影響により延期となってしまった。

 もちろんフジロックだけでなく、数おおくのイベントが中止を余儀なくされた一年だった。慌ただしい日々のなか、生で演奏される音の礫にとてつもないエネルギーを与えてもらうことで生きながらえていた自分にとって、今年の状況は大打撃だった。じょじょに再開されてはきたものの、ライブというハレの日がなかなかおとずれることのない、虚脱した生活はいまもつづく。

 そんななか、思い切って自宅のオーディオ機器を買い替えたこともあり、じっくりと音楽を聴く機会は以前よりも増えたように思う。なかでもレコードプレーヤーを買い替えたことによって、アナログで音楽を聴くことがますます楽しくなっている今日このごろ。ただし、購入して半年でフルオート機能の調子が悪いのはまぢで解せないぞ。

 

 勝手に何度も再生しやがる頑ななレコードプレーヤーに齷齪しながら、今年もとくに気に入ったアルバムを20枚選んでみた。去年に引きつづき、ランキングを決めることはなく、あれはたいせつだなとか、これもすばらしかったなとか、頭に浮かんだ作品をつらつらと紹介していければいいと思う。

 

 

Holy  Hive『Float Back To You』

 

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 外に出るのも憚られ家にいる時間が多いとき、この作品が身体へ沁みに沁みた。ブルックリンを拠点とする3人組スウィートソウルバンドのファーストアルバムは、精選されたバンドアンサンブルとVo/Gt.Paul Springの伸びやかな高音ボーカルがたまらなく良い。2曲目「Hypnosis」の「Pa Pa Pa」というコーラスワークやタイトル曲「Float Back To You」のファルセットなど、きもちのいいメロディにあふれている。

 記憶に間違いがなければ、春頃に小山田圭吾氏のラジオで紹介されており、一聴してすぐにライブラリへ追加した。その後、小袋成彬氏や坂本慎太郎氏などのラジオでも流されており、愛聴するミュージシャンたちがこぞってレコメンドしていたのがとてもうれしかった。

 Holy  Hiveが所属しているBIG  CROWNというレーベルは、いまの自分にしっくりくる「バンドアンサンブルが心地よいスウィートソウル」を奏でるアーティストが多数いて、今年一番の発見にもなった。BRAINSTORYやLIZETTE & QUEVINなど、好きなアーティストをさらに増やすことができ、嬉しくてたまらない。

 


Holy Hive - Hypnosis

 

 

mei ehara『Ampersands』

 

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 mei eharaの作品は以前から聴いていたが、今年リリースされた新作はこれまでで最も好きになった。セルフプロデュースとなった今作は、平熱をじんわりと保つようなメロディラインに、彼女が集めたバンドメンバー(Gtはトリプルファイヤーの鳥居真道氏、Baは元どついたるねんのCoff氏、Drはどついたるねんの浜公氣氏、KeyはODOLAの沼澤成毅氏)の演奏が絶妙に絡み合う傑作。レゲエ、ボサノヴァR&Bなどを昇華した音遣いにうっとりさせられつつも、聴き手にイメージを連続して投射することばたちにハッとさせられる。7曲目の「似合ってくる」の歌い出しが最も好きで、「肌色のままが歩いて行くほど似合う」という一節に、情景、背景、印象、イメージのすべてが解像度を保ったまま圧縮されている。朝、昼、夜のどの時間に聴いてもばつぐんに耳に効くのだが、不思議かつ魅力的なのは、時間帯によって表情が変わっていくような気がするところだ。時間帯を問わず、散歩のときに何度も何度も再生した。

 


mei ehara / 群れになって【OFFICIAL MUSIC VIDEO】

 

 

Khruangbin『Mordechai』

 

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 テキサス出身のエキゾファンクバンドの新作も、歌が入ったことによってますます自分の好みとなった。古今東西サウンドが混淆した魔術的な楽曲群を聴くと、身体の内奥からふつふつと踊りが生み出される。身体的にゆれうごくときもあれば、座って目を瞑っていながら心がぐらぐらうごくときもある。生の演奏を見ることができた折には、極上のグルーヴに歓喜しそうだ。朝気分が上がらないときには、2曲目「Time(You and I)」を聴きながら小刻みにステップを踏み、駅までの道を闊歩した。

 


Khruangbin - Time (You and I) (Official Video)

 

 

Healing Gems『Fiesta Pack』

 

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 Twitterでどなたかがこのアルバムを紹介していたのを見た瞬間、思わず細野晴臣泰安洋行』じゃないか! と声に出してしまった。どうやらロサンゼルスのバンドらしい。さっそく聴いてみると、ラテンやジャズのにおいをただよわせるオールドなバンドサウンドを現代の視点から解釈したきもちのいいサウンドが広がっていて、いまの自分の気分にぴったり。新しいものも古いものも、住んでいる場所でもそうでない場所でも、良いと思ったものを貪欲に取り込み、たのしみながら製作した雰囲気が伝わるナイスなアルバム。いろいろと落ち着いたときがきたら、3曲目「Tijuana Mushroom(Driving  on Lsd)」を爆音で聴きながら北関東あたりまでドライブに行きたい。

 


Healing Gems - Tijuana Mushroom Driving on LSD

 

 

Bananagun『The True Story Of Bananagun』

 

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 オーストラリア発エキゾファンクバンドのデビューアルバムは、まさに会心の一撃。ジャケットのように、船に乗ってアフロビートやサイケロック、ソフトロックなどをごった煮しながら世界一周旅行に出かけたような、ミラクルアルバム。1曲目「Bang Go The Bongos」から3曲目「People Talk Too Much」の流れで一気に南国気分に取り込まれ、6曲目「Out of Reach」で繰り広げられるエキゾと現代ポップスのバランス感覚に魅了される。そのとき、完全にこのアルバムの虜になったのだ。今年は60sのガレージバンドやサイケバンドのレコードをちょろちょろ集めていたのもあって、このアルバムは抜群にハマった。

 


Bananagun - Out of Reach [Official Video]

 

 

Ethan P.Flynn『B-Sides & Rarities:Volume 1』

 

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 イギリス待望のニューカマーは、しょっぱなからBサイド・レアトラック集という名目でデビューするという尖りっぷり。というよりも、この作品が本当にB面集なのかという驚愕するほどのクオリティ。ほとんどの楽器を自身で演奏しており、FKA  Twigsの新作に参加した実力の持ち主であることが、本作を聴けば聴くほどわかる。メランコリックでドリーミーなサウンドに酔いしれることのできるあやうい一枚だ。2曲目「What You Do Me」の音の広がりに包まる心地よさたるや! そして9曲目「True」でおれたちは涙を流してしまうんだ!!

 職場近くで気に入っているアジア料理屋さんがある。自分はよくランチに利用しているのだが、夜は音楽バーとして営業しているらしい。そのため、昼下がりにかかっているBGMがとても良い。そこである日、とてもいい曲が流れていると思ってShazamしたのが、Ethan P.Flynnだった。ありがとう料理屋さん、これからも足繁く通うぜ。

 


Ethan P. Flynn - What You Do To Me

 

 

King Krule『Man Alive!』

 

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 ジャズやヒップホップなどをクロスオーバーされた音像はさらに進化し、環境音を含んだサウンドによって、闇のなかへ誘われる。乾いたローファイなサウンドとともに、ブルージーな声が「You're not alone」と語りかける。自分が何を言わんとしているのかは、5曲目「The Dream」、6曲目「Perfecto Miserable」、7曲目「Alone,Omen 3」の流れを聴いてもらえれば理解していただけるはずだ。どこにもいくことができない今年、慰めのようにそばにあった作品だった。余談だが、LPについてきた「Perfecto Miserable」の別バージョンがとてもいいので、ぜひ聴いてみて欲しい。

 


King Krule - Alone, Omen 3

 

 

Wool & The Pants『Wool In The Pool』

 

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 冒頭の「Bottom Of Tokyo」のイントロが流れた途端、ガシッと心を掴まれた東京インディーシーンの怪物3人組によるファーストアルバム。細野晴臣氏のラジオにceroの高城昌平氏がゲスト出演していたとき、高城氏が流していたことで知ったかれらだったが、好みすぎて見事にやられてしまった。アナログリリースは去年だが、CDとストリーミングは今年だったので選出。ダブ、ファンクを経由した音に、Gtの德茂氏のダウナーな声が融和し、いまここに存在するかもしれない地下世界を覗き見ている感覚に陥る作品だ。じゃがたらの「でも・DEMO」をダビーにカバーした7曲目「Edo  Akemi」は、その批評性の高さに脱帽間違いなし。

 


Wool & The Pants / Bottom of Tokyo

 

ARTHUR『Hair of the Dog』

 

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 フィラデルフィア出身のエクスペリメンタルアーティスト・ARTHURのアルバムは、浮遊感と戯れていたと思いきや、突如地面に叩きつけられるようなゾッとする音遣いがなされていて、中毒性がばつぐんだった。鈴木慶一田中宏和が『MOTHER』のために制作した「8 Melodies」のカバーが冒頭におかれていることに驚いていると、続く2曲目「Feel Good」で繰り出される無邪気な暴力性を内包したエレクトロサウンドにK.O.    声もDaniel JohnstonやPeter Iversのような、幼いかわいげ、それゆえの恐ろしさがあってたまらない。サンプリングの巧みさにも夢中になれるすばらしいアルバムだ。

 


ARTHUR - I Don't Want To Talk To You

 

 

Crack Cloud『Pain Olympics』

 

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 カナダのポストパンク・アート集団のニューアルバムはまさに開戦の幕開けとでもいえるものだった。はぐれものたちが一同に介し、音を武器にめっためたに暴れ回る。パンク、ジャズ、ヒップホップの波を縦横無尽にかけめぐり、壮大なフィナーレへと帰結する必然の奇跡。特に3曲目「The  Next  Fix」の高揚感がたまらない。藤本タツキチェンソーマン』を読みながら聴くと、どちらもより作品世界に没頭できることだろう。

 


CRACK CLOUD - THE NEXT FIX

 

 

Yves Tumor『Heaven To A Tortuned Mind』

 

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 WARP RECORDS所属マイアミ出身のエレクトロアーティストによるセカンドアルバムは、生々しい妖艶さにあふれた傑作だった。グラムロックとサイケロックの要素に、現在進行形のエレクトロミュージックが混じり合うサウンドに惚れ惚れとする。そこに己のすべてを吐き出すような歌声が絡みつくことで、かれにしか表現しえない艶やかさが生まれていると感じる。4曲目「Kerosene!」や8曲目「Super Stars」で鳴るごりごりのギターがたまらなく好きなのだが、やはりなんといっても3分間生み出される音のすべてが格好良いオープニングナンバー「Gospel For A New Century」がベストだ。

 


Yves Tumor - Gospel For A New Century (Official Video)

 

 

Pet Shimmers『Trash Earthers』

 

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 サイケデリックでドリーミーでパンキッシュ、どこか不気味であると同時に、音を聴かなければ感じとることのできない儚さが生まれている。ブリストルの7人組音楽集団によるセカンドアルバムは、生の演奏とコーラスの声に、プログラミングが混ざり合う歪さが素晴らしい。SFの世界で爆発的にカリスマ性のあるロックバンドがいたとすれば、それはきっとかれらのような佇まいを感じさせる存在なのだろう。10曲目「The Mouth of」のもつセンチメンタリズモには拳を握りしめてしまう。

 


Pet Shimmers - All Time Glow (Official Video)

 

 

Phoebe Bridgers『Punisher』

 

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 開放的な曲から内省的な曲まで収録されているが、なんといっても全曲歌がすばらしい。カルフォルニアのシンガーソングライターによる2作目は、ときには怒り悲しくもあり、ときには楽しく嬉しくもある人間の感情の起伏を、多数のゲストミュージシャンとともに表現し得た傑作だ。言葉の意味を十分に理解できてはいないが、そこに込められた思いは十二分に伝わるのはとても不思議なことだと思う。でもこれは音楽にしかなし得ないことであると思う。そんなことを感じさせてくれる大切な一枚となった。聴くたびにものすごく苦しくなってしまうのだけれど、7曲目の「Moon  Song」がいちばん好き。

 


Phoebe Bridgers - Kyoto (Official Video)

 

 

John Carroll Kirby『My Garden』

 

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 SolangeやFrank Oceanのアルバムにも参加する鍵盤奏者によるファーストソロ。ジャズ、ソウル、アンビエントが基調なのだが、聴くたびにここがどこだかわからなくなるような無国籍の雰囲気に魅了されていく。

 一聴したときはぴんとこなかったのだけれど、自粛明け久しぶりのライブ(カネコアヤノ×サニーデイ・サービス)の開演前と転換のときに、ずっと流れていた。ひさしぶりにライブハウスのスピーカーで音楽を聴いたからか、本編に負けず劣らずこのアルバムが素晴らしくて、結局フィジカルも手に入れたのだった。こういうことがあるので、ライブハウスはたのしいのだ。

 


John Carroll Kirby - By The Sea

 

 

青葉市子『アダンの風』

 

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 いままでも好きでよく聴いていたが、今作が最も好きなアルバムとなった。「架空の映画のサウンドトラック」をイメージして制作された本作は、これまでの歌とガットギターの演奏だけでなく、多様な打楽器などを取り入れた幻想的な音像に耳をうばわれる。ジャケット写真のように、ちいさな子どもが生物たちと戯れながら海をゆっくりと遊泳するような、魅惑のサウンドスケープ。8曲目「Sagu  Palm's Song」は今年のベストトラックだ。

 


Ichiko Aoba - Porcelain (Official Music Video)

 

 

Adrianne Lenker『songs』『instrumentals』

 

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 自分も行くはずだったBig  Thiefのワールドツアーがコロナウィルスの影響で中止となった。その後、Vo.のAdrianneがマサチューセツの山小屋で録音したという本作は、木々のざわめきや動物のなきごえまでもが録音された尊いフォークサウンドに満ち満ちている。ちいさな世界で生まれる音の数々が、おおきく広がってそばに寄り添う。3曲目「anything」を先行で聴いてから、バンドに引き続きソロもとんでもない傑作になると思っていたが、6曲目「half return」のダブルボーカルとアルペジオのうつくしさにそれは確信となった。『songs』ももちろんのこと、胸にひりつくアンビエントフォークが鳴る『instrumentals』の2曲はレコードで聴くと尚のこと良い。

 


adrianne lenker - anything (official audio)

 

 

Soko『Feel Feelings』

 

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 ロサンゼルスを拠点に活動するフランス生まれのシンガーであり、俳優によるソロアルバム。ハスキーな歌声でありながらも、伸びやかな高音がなんとも魅力的だ。精選された楽器のアンサンブルとともに、感情のひとつひとつを掬い上げて歌うダウナーなロマンスに引き込まれる。MGMTのJames RichardsonやBeach FossilsのDustin Payseur、そして先ほど取り上げたJohn Carrol Kirbyなどが参加しているのも納得。USインディーが好きな方すべてに一聴していただきたい作品。

 


SOKO :: Being Sad Is Not A Crime (Official Video)

 

 

GEZAN『狂(KLUE)』

 

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 宣戦布告のようなスタートから、BPM100(〜200)で駆け巡る反骨と希望の音楽。ダブの要素が本作の毒の巡りを加速させ、現前には壊れかかった、いや、もうすでに壊れている世界がはっきりと見えてくる。そしてラストの「i」では、幸せになることそのものが、この世に対する最もつよい反抗であることが、やさしく切に歌い上げられる。絶望は希望のはじまり。今年はこれを挙げないで何を挙げるのか。われわれが狼煙を上げる契機となる怪作だとつよく思う。

 


GEZAN / 東京 (Official MUSIC Video)

 

 

サニーデイ・サービス『いいね!』

 

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 家にいるばかりで人にも会えないとき、よく聴いていたのはサニーデイ・サービスの新作だった。みずみずしいサウンドに外を駆け巡りたくなったり、はたまたコンビニで買ったコーヒーをだらだらと飲んでみたくなったり、いまを生きるわれわれの心象の写し鏡のようなアルバム。キャリアの長いバンドが初期衝動のかたまりのような作品を発表してくれただけでも、たまらなくうれしいのだ。

 


Sunny Day Service - 春の風【Official Video】

 

 

寺尾紗穂『北へ向かう』

 

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 あえて順位づけをするとするならば本作がベスト。詳しいことは以下の記事にまとめたので、そちらを参照していただきたい。

 

tacchi0727.hatenablog.com

 


寺尾紗穂 - 北へ向かう

 

 

 

 以上が今年リリースされたなかでもよく聞いた20枚のアルバムだ。こうして並べてみると、どこか「ここではないどこかへ」の希求が自分のなかに内在しているのかもしれないと感じてしまう。

 そして、ここで挙げた作品のほとんどがある種の混淆性をおびているのではないかと考えている。ジャンルという概念などお構いなし、取り込めるものをすべて取り込んで己の表現に昇華していく強度がどの作品にもあると思う。

 また、ソロ、バンド問わず、多様なミュージシャンとの共鳴が、自分のなかで好きな作品を選ぶ際の基準となっているのかもしれない。特定の演奏家やプロデューサーに固執することなく、ゆるやかに、けれども強固な連帯を、どの作品にも感じとることができる。そんなことを選びながら考えたり思ったりしたのだった。

 2020年は腹が立ってしようがないことだらけだったが、こうして振り返ると音楽があったからこそ感じとれたエネルギーに満ちていたのだなと思う。そんなすばらしい作品に引き続きパワーをもらいながら、おれたち来年もぶちかましていこうぜ。

 

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「まつり」

 焼き物の匂いと甘味の匂いが、空気の熱と混じり合って満ち満ちている。5時に鳥居の横で待ち合わせをしたけれど、誰も来ない。いまは4時58分。色々な人が鳥居をくぐって境内に入る。

 たこ焼き、くじ引き、りんご飴。同じようなデザインの屋台は、店ごとにバラバラなものを売っている。まれに二軒ならんでお面屋さんがある。

 こうして待っていると、もうあいつらは来ないのではないかと思い不安になる。尿意を催してきたけれども、向かった瞬間かれらがやってきて、なんだよいないじゃん先行こうぜと言って、おいてけぼりにされることが怖くて怖くて、トイレに行けない。

 境内をたくさんの人が進んでいく。いまのところ知り合いはいないが、ここで見つかってしまうと、誰かを待っている自分の姿の恥ずかしい。もしかしたら誰も来ないのではないかという屈辱に苛まれて、往来の人間の顔が曲がって見える。

 日が徐々に暮れてきた。まだ明るいのに、屋台のランプに羽虫が一匹張り付いていた。

 かれも誰かを待っている。大体羽虫はいつも数匹、時には数十匹以上になって、集団行動しているが、かれは逸れてしまったのだろう。

 羽虫が近づいてきた。ふだんなら手で払うか叩き潰してしまうところだったが、それをじっと見ていた。羽虫はひとり、境内へ入っていく。ずんずん飛んでいく。追いかけていく。まわりのことなど気にせず追いかけていく。

ぐるなる(6/27(月)〜9/8(火)の雑記)

 おなかがずうっとぐるぐる鳴る。だいたい午後から夕方にかけて鳴る。これは胃の消化作用によるぐるぐるではなく、大腸のはたらきによるぐるぐるなのだ。

 しずかなオフィスで皆が黙々と仕事をしているなか、自分のおなかがなんども鳴る。厄介なのは、稀にほぼ放屁に近い音が出てしまい、たまらなく恥ずかしい思いをすることだ。ちがうんですよ、屁じゃないんですよ、ただ腸のうごきが活発なだけであって屁じゃないんですよ、と念力で周囲のひとびとに訴えかけるも、心の声なのでもちろん届くはずがない。あれこれ言い訳の文言を考えながら残業に勤しむうちに、夜は更ける。

 こうした悩ましい生理現象をなんとかしたいものだと思い、ネットで症状を検索すると、だいたい過敏性腸症候群がヒットする。さて、なぜこの症状が起きるのかとページに目をやると、ほとんどがストレスが原因だという。そんなんどうすることもできん。

 それでも、自らの症状をなんとかして改善したい。考えられる対処法を、ここ半年間試してみた。手始めに就寝前におなかを揉むマッサージからはじまり、毎朝のヨーグルト、R−1、ビオフェルミンと口内からも摂取できる対策をとってみたものの、いまいち効果が実感できない。はてどうしたものかと悩みながら近所のスーパーを物色していると、とある商品が目にとまった。そう、ヤクルトである。

 そういえばヤクルトは、幼少期に祖母がいつも冷蔵庫にストックしていて、自分が飲む前にだいたい祖父と弟が飲みつくしていた。独特のあまったるさを久しぶりにあじわってみたいものだなと思い、籠に入れる。

 こんなわけではじまった毎朝ヤクルト生活。思いのほかわるくなく、以前よりも勤務中におなかがぐるぐる鳴る回数が減った、気がする。ありがとう、ヤクルト。案外身近なところに、解決策はあるものだ。

 そういえばおなかの調子がよくないことを他人から指摘されたのは、高校生のころに通っていた整体のおじちゃんがはじめてだったことを思い出す。自分が怪我をしたのは足だったのだけれども、

 全身をほぐしてからのほうが効くよ。

とおっちゃんは言う。肩に腕に腹にとほぐす最中、急に、

 きみ、普段からあんまりおなかの調子がよくないでしょう。

 と言った。確かにそんなによくはないと返答すると、かれはうなずきながら施術を再開し、夜寝る前でもいいからおなかをマッサージするといいよと助言してくれた。それならばやってみようかしらとセブンティーンの自分は思った。ふとおじちゃんの顔を見ると、額には玉粒の汗が生じており、ぽとッと自分のTシャツにおちた。

 昨年末、実家に帰省したとき、たまたまその整体の前を通りかかったのだが、すでに空きテナントとなっていた。ずいぶん長いあいだ店舗が入っていないようだった。

 

 こんなことを思い出したのは、柴崎友香の『百年と一日』を読んだからかもしれない。

百年と一日 (単行本)

百年と一日 (単行本)

  • 作者:柴崎 友香
  • 発売日: 2020/07/14
  • メディア: 単行本
 

 

 いつかどこかにそこにあった(かもしれない)ひとびとの生が、ここに散りばめられていました。それぞれの短編のタイトルを読むだけでもぐっと感情が動くのだが、本編を読むことでかつてあった/いまある/これから出会うものたちに対して、ますます思いはめぐる。「兄弟は仲がいいと言われて育ち、兄は勉強をするために街を出て、弟はギターを弾き始めて有名になり、兄は居酒屋のテレビで弟を見た」が特に好き。今年に入って読んだ国内小説のなかでも群を抜いて気に入っている。

 

 最近は雑記を書くことができなかった。公私ともにバタバタしていて、何かを「書く」という心持ちになかなかなれなかった。けれども、あたまのなかでぐるぐる考えていただけでは、さっと感情は消えてしまう。そんなことを書きながら考えており、やはり定期的に書かなければいけないなと思った次第だ。

 最近よかったものたちの感想も書きたいけど、まったく体力が残っていないので今回はここでおしまいにして、これからの雑記にちょくちょく書いていくかもしれない。

 

 

アフターアワーズ(シャムキャッツ解散と聞いて)

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 2020年6月30日の火曜日。退勤後、電車のなかでSNSやニュースをチェックする。職場ではスマートフォンを見る余裕はほとんどないので、このタイミングでざっくり今日のできごとを確認する。目に飛び込んできたのは、「シャムキャッツ解散」の文字だった。まじかよ。

 

 

 シャムキャッツのことを知ったのは、たしか2014年のはじまりだった。Twitterを通して音楽の情報を得ることがおおくなり、その流れでシングルリリースされた「MODELS」を聴いて、ガツンと衝撃を受けたことをいまでも覚えている。

 


シャムキャッツ - MODELS @ OUR FAVORITE THINGS 2015

 

 ばつぐんのロックンロールチューン。絡み合うツインギターにうねるベース、はねるドラム。歌われるのは、トラック運転手の彼と会社員の彼女の日常だ。

 「MODELS」をきっかけに過去の曲も聴き漁る。「アメリカ」「なんだかやれそう」「No.5」といった楽曲に夢中になり、その流れで最新アルバム『AFTER  HOURS』も購入した。これがとんでもなくすばらしいアルバム。流れるメロディー、奏でられるストーリー。当たり前のことだが、これまで自分が住んだことのない土地にも、日々過ぎていく現実の生活が存在し、時々刻々感情の起伏を抱えて生きている。歌われるかれらの日々が、自分の感情に跳ね返り、あたたかくとげとげしくかろやかに触発させられたのだ。

 自分は当時大学2年生。授業やサークルに取り組みながら興味のあった業種でバイトしてみたりライブに足繁く通ったりといった、かつて想像していた大学生活なんてものはなかった。片田舎の大学で原付を走らせながら、ひたすらに授業と部活と準夜勤バイト、対人関係でそれなりに後悔することもあり、地方で鬱屈としていた自分には、本作で歌われるかれらの生活に共感を覚えると同時に、背中を押されるような励ましのようなものを与えられた。つまり、自分にばちばちと突き刺さったのだ。

 そして、「このまま」でいたいきもちと「ここじゃないところ」へ行ってみたいきもちがますます拮抗することとなり、あれこれ悩んでいるときにはいつもこのアルバムを聴いていた。特に大学入学当時抱いていた、卒業後は何となく地元に帰ってまいにち働くことになるのだろうという考えに疑問がめばえ、彼らの音楽が鳴らされる場、つまり関東に一度は暮らし、だいすきなものに刺激を受けながら生活をしたいというきもちは強くなっていった。

 

 

 続けてリリースされる作品も何度も何度も繰り返し聴いている。次にリリースされた『TAKE  CARE』はサヌキナオヤさんによるジャケットももちろん、封入されているイラストブックも大好きで、何度もパッケージを読んだ。全曲好きだが、夏目さんと菅原さんのツインボーカルが印象的なラストナンバー「PM 5:00」がお気に入りだ。

 


シャムキャッツ - PM5:00 @『TAKE CARE』RELEASE TOUR FINAL

 

どうしてここにいたいのか

たまにわからなくなるのさ

川沿い 遮るものもなく西陽が照りつける

あの電車に乗らなくちゃ

最近僕らはしゃべるとそんなことばかり言ってるのだ

シャムキャッツ「PM 5:00」、2015)

 

 電車なんて滅多に乗ることはなかったけれど、くりかえされる平穏な日々にふと感じる焦燥感が、「あの電車に乗らなくちゃ」というフレーズに含まれているような気がして、地方の片田舎でひとり唸りながら聴いていた。

 

 

 そしてそして、部活も落ちつき、ようやくシャムキャッツのライブを観ることができたのは、『きみの町にも雨はふるのかい?』のリリースツアーだった。それはもう感激のライブで聴きたかった曲をほとんど演奏してくれただけでなく、ラストに披露された「渚」が特に印象深い。このイントロが流れたときの高揚感はいまも残っている。終演後にはだいすきな『AFTER  HOURS』にメンバーの皆さんからサインも頂けて、これは自分にとってたいせつな宝物となっている。

 この時期前後から、Twitterを通じて同じ地域に住んでいた音楽好きの方々と交流することが増え、かれらもみんなシャムキャッツのことがだいすきだった。自分にとってシャムキャッツは、さまざまな出会いを演出してくれてもいたのだ。

 

 

 その後リリースされた作品はつねに自分のそばにあったし、ライブにも足を運んだ。「このままがいいね」「花草」「Travel  Agency」「Coyote」「完熟宣言」「おしえない!」「BIG CAR」……そんななかで、自分も本当にしたいことは何だろうかと思い続け、思い切って進路を変更。はじめてシャムキャッツを聴いたときに抱いた憧憬がまわりにまわって、いまでは彼らがライブをし続けた土地に暮らしている。

 ようやく自分が本当にしたいことが何か明確になってきたけれども、理想と現実はうまく噛み合わない。落ち込むこともあるけれど、かれらの曲で歌われる人々に思いを巡らすことで、何とかやってこれたこともある。この状況下が落ち着いたら彼らのライブも真っ先に観たいと考えていたのに、今回の解散という報せは正直かなりショックだった。

 でも、今後リリースはなくたって彼らが歌ってきたものは残るし、変わらない。やさしくて、とげがあって、奔放で爽快。鳴らした音はあらゆる場所で暮らす人々と土地に宿る。かれらの曲は引き続きわたしたちの生活に寄り添うのだ。

 


シャムキャッツ - 完熟宣言 / Siamese Cats - Kanjuku Sengen (Official Video)

 

だいたいの事はもう分かったよ

曖昧にするのも慣れたさでも

完熟宣言出せる日まで

続いていくのさ(相変わらず)

探していくのさ(ゆっくりと)

歩いていくのさ

シャムキャッツ「完熟宣言」、2018)

 

 9月にリリースされる2LPベストアルバムはぜったいに手に入れるだろうし、そういえば友人がおすすめしていた『はしけ』のLPも手に入れたいなどと考えている。こうして日々は続いていくのさ、探していくのさ、歩いていくのさ!