耳鳴りが止まらないや、6月。

 

 

  就職活動と学業に奔走する6月でした。時折首も回らないような大変な状況が続き、深夜の研究室で「おれが!おれが、東京タワーだいっ」と叫びながら三点倒立、そのまま崩壊といった破滅的行動などをしたくもなりましたが、そんな時はエレファントカシマシ「Easy Go」を聴いて、即座に我に返り、自分自身を奮い立たせる。「転んだらそのままで胸を張れ」「疲れたらそのまま寝ちまえばいい」と歌うミヤジさんに嗚咽し、そして前を我武者羅に進んで行く勇気を感じながら、Go  Goしているうち、あっという間に一ヶ月が終わってしまった。きっとしばらくはこんな感じで、日々を過ごしていくのだろう。先は不透明だけど、靄を払うために手足と頭を回転させて、いやになったり、疲れたりしたら堂々とぶっ倒れようじゃないか。ということで、ボクが見たもの・聴いたもの等をざっくりとまとめていきます。

 

 

  6月頭は、Kanye Westが関わる作品に度肝ぬかれていました。彼は最近の発言などで、やんややんや言われてはいますが、作品のインパクトはいまも健在。特にKid Cudiとのコラボアルバム『KIDS SEE GHOSTS』には、やられました。高校生のころ、雑誌やピッチフォークを何となく咀嚼したつもりになって、それはもちろん今もそうなんですけど、とりあえず聴こうと思い、手にとったKanyeの『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』。初聴の際に、ヒップホップってこんなにも自由なのか!と感嘆した記憶が蘇える。

 

  そして、Snail Mailのデビューアルバム『Lush』が途轍もなく素晴らしいアルバム。言葉を十分には理解できてはいないけど、インディーのギターロックを基調としながら、切なさだったりやるせなさだったりが、ひしひしと伝わってくる。シンプルだからこそ、輝くものって絶対にあって、例を挙げれば枚挙に暇がないのだけれども、彼女の作品は間違いなくそれだと。6月最もヘビロテしたアルバムです。

 


Snail Mail - "Pristine" (Official Lyric Video)

 

  あとは海外の作品であれば、ニューヨークロングビーチ発、Oso Osoのシングル「gb/ol h/nf」が格好良かったです。Cloud Nothingsとかが好きな方は是非に。

 


oso oso “gb/ol h/nf” (official video)

 

  日本のものであれば、冒頭に述べたエレカシの新譜だけでなく、lyrical school『WORLDS END』、リーガルリリー『the telephoone』、宇多田ヒカル『初恋』、KIRINJI『愛をあるだけ、すべて』、SEVENTEEN AGAiNの新曲「戦争は終わりにしよう」が良かったですね。リリスクとリーガルリリーに関しては、ライブにも赴きました。

 

  就職活動中に東京へ赴く際は友人・後輩宅に居座って、ボクの面接が終わり、彼らが帰宅したあとは、あれこれ話をしながらダラダラ酒を飲むなど、ふてぇ生活をしていました。後輩宅にお世話になった際、アイドル好きの後輩姉から情報を得て、急遽男二人でリリスクのインストアライブへ。そしてこれに行く前に、ふらっと入った中華料理屋さんで、麻婆豆腐、餃子、麦酒を摂取し、よちよちしながら会場入り。それにしても、平日昼からの飲酒は気持ちが良い。へらへら。

  さて、ライブはというと、リハで「オレンジ」「消える惑星」。本編は「つれてってよ」「消える惑星」「High 5」「夏休みのBABY」「FRESH!!!」の5曲。はつらつとしたパフォーマンスにこちらもテンションが上がってしまいました。生歌うまい。後半三曲では、要所要所で池袋サンシャインシティの噴水がパァーッと宙を舞い、それと呼応するかの如く、跳ねるリリスクのメンバーにこちらも気分高まる。hinakoさんから爆レスを貰い、男二人で舞い上がってしまった姿は、側からみれば珍妙だったに違いない。

  それにしてもアルバムが非常に素晴らしい出来。通しで何度も何度も聴けちゃうアイドルのアルバムは、ドラッグよりも危険だって誰かが言ってたような気もするけど、こりゃあ危険な良薬だよ。出だしのリリックから思わず「おっ」とさせられた「High 5」がベストトラックですが、「OKリリスク、踊らせて」の導入が効いている「Hey!Adamski!」も好み。いつか長尺のライブにも赴き、minanさんとチェキでも撮りたいな。こんなこと考えてしまうから、アイドル追うのはしばらく辞められそうにないですね。

 


lyrical school「High5」

 

  また、リーガルリリーのライブにも行きました。ちなみにこのためだけに、一旦東京を離れて居住地へ帰りました。相変わらずボクはスケジュール管理がヘタ糞、ゴミ糞。でもこんなハナ糞のためにわざわざライブ来てくれて、本当にありがとう、って感じです。共演がteto、ドミコでした。最高。

  tetoのライブは「拝啓」「高層ビルと人工衛星」「暖かい都会から」と、序盤から疾走感と爆発力溢れるライブ。ボーカルの小池さんはマイクに喰らいつくように歌って、それが何より格好良い。そのせいで可変式のマイクが、右に左にクルクル動いてしまうのですが、それに柔軟に対応して歌う様子に何だか笑ってしまいました。すんまへん。あと、小池さんのアンプ横にペットボトルホルダーのようなものが備え付けてあり、加えてそれにはストローが突き刺してある仕様だったので、小池さんは手を使うことなく、フリーなスタイルで水を飲んでいました。これにもちょっと笑ってしまいました。すんまへん。が、本当に格好よかったですぜ、と必死の弁明。新曲?の「~(聞き取れなかった)と15歳」や、終盤の「忘れた」「9月になること」における力強い演奏と歌声に、ボク、大きく心を掴まれて。 

  ドミコは一年ぶり。まず思ったのは、「進化している!」です。グルーヴの出し方がより強硬になったというか、何というか。ひたすらに気持ちがよく、本日6杯目の酒に手を出してしまうほど。「くじらの巣」でふわふわ。会場の雰囲気もバチっと掴んでました。

  そして、リーガルリリー。凄かった。チャットモンチーを参照軸にされがちで、本人たちのバックグラウンドにはもちろんあるんだろうけど、チャット同様、いやそれ以上に複雑で技巧派で変態的、だけどポップに落としこもうとしているのかなと、ライブを観て実感。「ぶらんこ」「スターノイズ」におけるノイジーなギターが儚くて、素晴らしい。「僕のリリー」と「the Tokyo tower」は相変わらず聴くたびに泣いてしまいそうになる。きのこ帝国、People In the Boxあたりは背後にあるな、なんて観ながら考えていました。あと海外の参照軸はなんだろう。それにしても柔らかな歌声とそれとは対照的な唸るギターとベース、パワフルなドラムが印象的で、音源だけでなく、ライブも追っていきたいな、なんて。本タイトルは歌詞の一部から拝借させていただきました。

 


『the tokyo tower』LIVE - リーガルリリー

 

  宇多田ヒカル『初恋』を聴かないで6月は終われないと、スカスカの財布をより風通しを良くして、広々とした心でイヤホンを耳にはめる。こちらも傑作だとボクは感じています。今回はクリスデイブのドラムが印象的ですが、何より詩が良い。「あなた以外なんにもいらない/大概の問題は取るに足らない/多くは望まない 神様お願い/代り映えしない明日をください」(「あなた」)とか、日常生活からフっと見えないものに対する祈りへと展開し、また韻も踏んでいる点に、鳥肌が立つ。

 


宇多田ヒカル 『あなた』(Short Version)

 

  文芸作品は、岡田恵和峯田和伸『いちごの唄』(こちら刊行記念のTANG TANGデザインティーシャーツもゲッツ。今夏ヘビロテの1着になりそう)、北条裕子『美しい顔』、燃え殻『ボクたちはみんな大人になれなかった』、滝口悠生『茄子の輝き』、川上未映子『ウィステリアと三人の女たち』、佐藤文香『君に目があり見開かれ』などを読みました。アチーブ発掘という点では小島信夫とか。

 

いちごの唄

いちごの唄

 

 

群像 2018年 06 月号 [雑誌]

群像 2018年 06 月号 [雑誌]

 

 

ボクたちはみんな大人になれなかった

ボクたちはみんな大人になれなかった

 

 

茄子の輝き

茄子の輝き

 

 

ウィステリアと三人の女たち

ウィステリアと三人の女たち

 

 

君に目があり見開かれ

君に目があり見開かれ

 

 

特に印象深いのは、『美しい顔』。

  東日本大震災の被害に遭った語り手であるサナエ。母の死を自覚しながらも、マスコミに積極的に映ることで  現実と折り合いをつけようとしない自意識と葛藤。その後、母の死を受け入れ、弟とともに転居して新生活を送る中で実感する被災の事実。「日常生活のなかでこそ、私は被災した。」の一文が、特にボクの印象に残っている。

  現在(以下7月中旬の立場から)本作の「盗用」「剽窃」問題、また「当事者性」とか「小説表現」とかより複雑な問題で、賛否両論となっています。詳細はかなりの数の有識者の方々が述べていますので、調べてみてください。しかし、ボクは「賛」の立場に身を置きたい。既存の言語表現に対する同様の問題は過去に多々起きており、出典不明記から生まれた論争には、個々人や出版社の対応も問題になってくるわけで。そもそもボクたちが使う言葉なんて、誰かからの借り物でしかないでしょう。借り物の言葉をどう受け止めて、それを発していくのかとか、ノンフィクションや学術書・論文の言葉は、果たして著者「だけ」の言葉なのかとか、こうして書いていると益々わからなくなってきて、殊更自分の阿呆加減に腹が立ってくるので、一旦保留。特に取り上げたいのは、「当事者性」についてです。

  先日居住地が大雨の被害を受ける出来事があって、ボク自身や周辺には特に被害がなかったのですが、数キロ先では命を落とした人も沢山いる。友人等から心配の連絡が入ることもあり、そうした目線から考えると、ボクも被害を受けた立場なのかもしれない。だけど、実際は元気で、テレビの左端と下段に流れる情報をただ見つめるほかない。何とも中途半端な立場。大きく規模は異なれど、震災のときも大きな被害が出て、離れた地域に住む人にとっては、東北が一括りに捉えられていて、ボクがかつて感じていた地域にも、いまのボクと同じような状況の人々がいたかもしれない。一言で括ることのできる被害の言葉なんてないのだ。

  転じて、災害を体験をした者のみがそれを題材としてよいなんてことはないと思う。本作では津波の場面で皆が言葉を失った描写があったと記憶している。言葉にできない体験。それを見聞きしていないものが発することには、強い暴力性が伴うことを覚悟しなければならない。だけど、そうして紡がれた言葉がもしかしたら様々な立場の人々の心に刺さることがある可能性は大いにあるだろう。今回の豪雨をきっかけに、改めて読み返して、そんなことを考えました。そのため北条さんには、これからも小説を書き続けてもらいたいな、もっとあなたの作品をボクは読みたいな、などと感じています。

 

  漫画ではふみふみこ『愛と呪い』の救われなさに読んでいるこちらも辛くなってくる。90年代、とある宗教を信仰する家庭に生まれた主人公。実父からの性暴力、信仰への疑問と受容するほかない状況への絶望、実際に起きた事件が複層的に描かれる。上半期で一番衝撃的だった漫画です。

 

愛と呪い 1 (BUNCH COMICS)

愛と呪い 1 (BUNCH COMICS)

 

 

大童澄瞳『映像研には手を出すな!』3巻、『ゴールデンカムイ』14巻は、相変わらずの熱さで、読んでいるこちらもワクワクしました。

 

映像研には手を出すな! 3 (ビッグコミックス)

映像研には手を出すな! 3 (ビッグコミックス)

 

 

 

  そして6月ベストカレー。デデン。新宿はエピタフカレーの「ココナッツチキン・ポークビンダルー」。ココナッツの甘さとビンダルーの香辛料が口のなかで絶妙な混じり合い、たまらんねぇ。

 

f:id:tacchi0727:20180715163642j:image

 

  久々に月のまとめブログを更新したら、以前にも増して長くなってしまったような気がする。きっと、あれだ。月終わりに胃腸炎を発症し、その際医者に我が菊門へ指を突っ込まれるという人生初のアナル開発を受けてしまい、そうして拡張した下の方の穴から言葉が紛れ込んできたに違いない。それしかない。んなわけあるかいっ。(了)