teto『dystopia』

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  年に数組、一聴したその瞬間脳天をぶち抜くような衝撃を与えてくれる日本のバンドに出会う。ぎゃんぎゃん鼓膜に鳴るサウンドに、鳥肌が立つのだ。ありませんか、そんなこと?僕にとって、そんな今年のバンドはtetoだ。

 

  2016年1月に結成。そこからまだ2年も経っていない間に、本作は2017年8月のタワレコメンに選出。名前を聞いたことがある方も多いだろう。銀杏BOYZandymoriを引き合いに出されることも多く、性急なビートと洪水のように流れていく言葉、今にもぶっこわれちゃうんじゃないかってくらいの爆裂的なライブが、そのように言わせてしまうのではないか。*1

 


teto - 暖かい都会から(MV)

 

  不穏な雰囲気から開始し始めたと思った直後、ドラムが数発入るやいなや、超スピードで耳を駆け抜けていく。うおっーーーーー。きたきたきた。まくしたてるような言葉に圧倒されながら、そのままの勢いでサビへ。これがまたいいメロディなんだな、ほんと。

  もちろんこの曲だけでなく、全曲メロディが聴裏*2に焼き付いて離れない、キラーチューンばかりである。サビではこっちも叫びたくなる、いや、叫ばせてくれっ、ファックフォーエバー「this is」。迫力あふれる歌い方が圧倒的「teen age」。リーガルリリーのたかはしほのかがコーラスで参加、聴いてるこっちまで感傷的になってしまうじゃないか「9月になること」……もちろん挙げていない曲も最高だ。

 


teto - 9月になること(MV)

 

  そして歌詞は、都会の中でやるせなく塞ぎ込んでいる何者かによる、腹の中で煮えくり返っている沸々とした怒り、現状へのどうしようもなさへの叫びだと感じた。

 

本音なんて置いておいて余計なお世話だって蹴って時間が経って這って

いつしか本当のところ本物の心なんてものは無くなっていた 浅はかだ

本命なんて放っておいでよって腑抜けた声で誘って間抜けに反省、懺悔

左右前後運動の多少面倒臭い過剰な愛としか思えない頭が仇になった

雑踏の中で揉まれたままシャットアウトしてそっと目を閉じた

「暖かい都会から」

 

「回るトレンド」や「空洞なコメント」で汚れてまった、このアルバムの主人公。「知らないフリをして生きていくには知ることを知り過ぎた」(「this is」)彼は、ルサンチマンに救いを求めながらも、過去の自分を振り返っていくようになる。

 

過ぎ去った夏が作り出した ぶっきらぼうな夜を少し恥じた

あなたへの遠い遠い遠い遠い距離が 重なって重なって

「9月になること」

 

今日もまた勘違いされて終わっていった

嘘吐いて騙して騙されてしまった

昔ってもっと笑い合って描き合って抱き合ったような

理想郷がいつだって側にあったような

「utopia」

 

過去の記憶をたどりながら、彼はたのしかったこと、うれしかったこと、かなしかったこと、景色、街、その匂い、だいすきだったあの娘、モノクロのリタ・ヘイワースなどを精一杯思い出す中で、いつしか社会に揉まれ薄汚れてしまった自分を相対化してしまう。

  アルバムタイトルは「dystopia」。いつだってこの世は地獄みてえなものだ。かつてあった理想郷などもうない。いや、そもそもなかったのかもしれない。楽しいことは須臾、苦しいことは悠久。腐っちまいそうだ。*3「考えても 考えても/想像通りにはいかない/生きられない」(「あのトワイライト」)加えて、昔を思えば思うほど、今の自分の浅はかさや擦れた心が浮き彫りになってしまう。だけど、だけれども。そんな世の中だからこそ、今を受け止め、足を前に進めながら、強く生きていかなければならないのだろう。

 

何度でも輝いて生きてたいよ

あのトワイライトのように

トワイライトのように 僕は

「あのトワイライト」

 

  くそったれなこのディストピアで、いいこともわるいことも、たのしいこともむかつくことも、全部のみこんで生きていく。そんな世界だからこそ何よりも輝いていたい。だからこそ叫ぶ。叫んでやる。そんな想いが詰まったアルバムなのではないかと、勝手に考えている。

  そしてどうしようもないこの世と言う名のディストピアに出向く僕も、このアルバムの一曲目のスタートボタンを押しながら、何よりも何度でも輝いて生きていけたらいいなあ、なんて思っている。

 

*1:書き手はまだ観れていません……近所に来てくれ……

*2:こんな言葉は存在しません、勝手に作ってごめんなさい。

*3:橋本奈々未「もしかしたら今生きているこの世界が地獄かもしれないし」(「乃木坂って、どこ?」2013年6月24日放送回より)