魂のダンス

書く無用人

Sexy Man

  就活中の元バイト先の後輩が、面接のためにうちへ泊まりに来た。自分のもとを訪れてくれたことへの嬉しさ、そして面接へのエネルギーにしてほしいという思いから、夜はふたりで「キッチン男の晩ごはん」へ行った。インパクト抜群のボリュームと濃い目の味付けで、景気づけにはピッタリのパワーフードである。「頭の悪そうなメシですね」だとか、有線で流れるあいみょんを耳にして「最近どこに行ってもあいみょん流れているから、腹たつんですよ」と発する後輩は相変わらずシニカルでクールなのだが(対照的に「人気だからねぇ。聴いてみると良い曲多いよ」と返す半端者は自分である)、やはり今後の生活がかかる就職活動ともなると不安なことも多いらしく、ぺーぺーではあるが一応会社員として暮らすの自分への相談事などを含め、色々と話した。久しぶりとは言ってもバイトの送別会から一ヶ月経ったか経っていないかくらいの時間の幅ではあるが、見知った顔、加えて音楽を中心に話ができる人と会うと、高揚感が生まれてしまい、二人でお店を出たあとからうちで寝るまで最近のレコメンドをお互いに聴かせ合うなどしながら、話続けてしまった。

  会社に向かう途中で後輩と別れ、特にトラブルもなく研修をこなし帰宅したところ、後輩からの吉報が届く。興奮している彼の声を聞いていると、こちらも歓喜の気持ちが生まれるのは何とも不思議なことだ。彼が来年以降こちらへやってくることは確定し、その頃には自分にそれなりの稼ぎもあるはずだから、彼にあいみょんを聴かせながら「キッチン男の晩ごはん」を三人前とビールを五杯ご馳走してあげたい。

 

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檸檬の刺青

  引っ越してきてから、およそ3週間が過ぎようとしている。住んでいるまちは生活面や文化面では大いに満足できる環境ながら比較的穏やかに過ごせるのだが、一歩外に出て新宿、渋谷などに諸用で移動すると、あまりの人の海に疲弊していまうのは、元来田舎で育っていたから故なのか。その渋谷で大学時代の友人と飲んでいて、酔いも回った頃にある奴が急に某英国風居酒屋に行きたいと言い出し、地下にあるその店に入ったものの、あまりの混雑具合と、上空に漂う夥しい性欲の霧に完全に参ってしまって途中退室した。ああいった場に順応して楽しめることを羨ましくないと言ったら嘘になるが、やっぱり自分にはそんなことはできないなと思って、その日の帰りに松屋のプレミアム牛飯をひとりで食べて、この瞬間こそが最も落ち着くんだということを味噌汁を啜りながら認識したのだった。ズズズ。

  ちなみに別の友人と同じ渋谷で飲んだときには、アットホームな焼鳥屋さんに連れて行ってもらった。愛嬌のあるおかみさんのお店にまつわるお話、彼女がおススメするに応じながら食べた焼鳥(絶品!)や、その具材当てQuiz大会を行ったことは非常に楽しい記憶として残っており、結局土地の名前で物事を決めつけるのではなく、何処へ行き何をするかにかかっているのだな。尊敬する人に案内してもらった高円寺も、面白そうな場所が多そうである。店の名前は失念してしまったが、ベトナム料理店のスパイシーなフォーはすごく美味しかった。

 

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